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着物は自由(6)振袖
 白茶縮緬地梅樹衝立鷹模様

東京国立博物館工芸室長 小山弓弦葉

Source: Nikkei Online, 2023年8月17日 2:00

ユニフォトプレス提供

オランダでは肩から裾まで一続きの長いドレスやガウンのことを「Japon」と記すが、これは、17世紀から18世紀にかけて、オランダ東インド会社が日本から輸入した人気商品、ヤポンセ・ロック―日本着物―を省略した言葉だ。

あまりに人気があったため、オランダ東インド会社は17世紀の末頃より、ヤポンセ・ロックのような丈の長い衣装をインドで作らせることにした。インド北西海岸の港であるカンバヤ(カンベイ)から輸出されたことからカンバヤと称された。日本風の大きな老松や桜を染めたものもあれば、この衣装のように東洋風の花唐草模様を染めたものもあるが、いずれもインドの手描き更紗で染めている点が特徴だ。

袖は細くなる傾向にあるが、衿(えり)や衽(おくみ)がついた仕立ては日本の着物と同様である。ヤポンセ・ロックは他のヨーロッパ諸国でも人気だったため、その代用品であるカンバヤもヨーロッパ各地で普及した。フランスでは「アンディエンヌ」(「インドの物」の意)、イギリスでは「バニヤン」(「インドの商人」の意)と称され、日本産に代わるインド産の「日本着物」として愛用されたのである。(18世紀、木綿、手描更紗、丈101センチ、幅95センチ、オランダ・ミュージアムロッテルダム蔵)