DX推進、頭取が最前線 北国銀「2周先行」

勘定システムクラウド化/「ペーパーレス」顧客にも

Microsoft News, 2020/8/20付

北国銀行は石川県を地盤とする中堅地銀である。資金量や店舗数でみると、よそとそう代わり映えしない。だがDX(デジタルトランスフォーメーション)でみると、2周は先行する取り組みが地銀で群を抜く。

北国銀行の杖村頭取

6月に頭取に就任した異能の経営者、杖村修司がその立役者である。

2周先行というのはこうだ。まず60人の行員に協力会社も加えた総勢180人のシステム部隊で、地銀で初めて勘定系システムをクラウドに完全移行すること。

もう1つは自行のデジタル化による生産性向上の改革をもとに、顧客企業にペーパーレス化などのコンサルティングを進めていることだ。非金利収入を得る新事業のふ卵器をつくったといえる。

北国銀でDX戦略を自ら描き、実行してきたのが、杖村である。新システムで協業する日本ユニシス社長の平岡昭良にかけた言葉は「IT業界の契約形態や受注者・発注者の関係性を変えたい」だったという。

北国銀とユニシスで役割分担し、チームを作り開発をしていく。例えば、従来ユニシスの役割だったサーバー環境の構築やテストなどは北国銀がメインで手掛ける。

DXを推進する杖村は1人の経営者と出会い、気脈を通じるようになった。昨年12月に上場したクラウド会計ソフト大手のfreeeの最高経営責任者(CEO)、佐々木大輔である。

「なぜ支店に出かけて、送金や振り込みなどの手続きをしなければならないのか。中小企業の生産性をあげるためにもオンラインバンキングを普及させるべきだ」という佐々木の持論に、杖村は共鳴した。

北国銀行はfreeeのソフトの導入を取引先に勧めるようになった。ところが、16年にそれが思いもしない騒動に発展したのである。

(敬称略)

(論説主幹 原田亮介)