マイナ保険証、病院に義務化 患者負担軽減も視野

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厚生労働省はマイナンバーカードに健康保険証の機能を付けたマイナ保険証の運用に必要なシステムの導入を、2023年4月に原則すべての病院に義務化する検討を始めた。導入費用の補助を拡充し、加算していた診療報酬は減額を視野に見直しを進める。遅れている医療機関のデジタル化をテコ入れし、患者の利便性を高める。

政府は医療機関のデジタル化の基盤として、窓口でマイナ保険証をかざして健康保険の資格を確認できるシステムの導入を進めている。医療機関や薬局で患者の医療情報も共有でき、効果的な投薬など健康づくりの後押しにつながるとみている。

ただ、システムの普及は進んでいない。政府は22年度中にほぼ全ての医療機関にシステムを導入する目標をかかげるが、足元は2割程度にとどまる。義務化で導入を促し、数百万円かかることもある初期投資への補助も拡充する。

健康保険証は将来的に、マイナ保険証への完全移行をめざす。厚労省はこれら施策について25日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会に提案する。

マイナ保険証で受診した場合の窓口負担も見直す。4月から医療サービスの対価にあたる診療報酬を引き上げ、患者の自己負担3割で初診を21円、再診を12円、それぞれ加算した。診療報酬を上げ、医療機関にマイナ保険証の導入を促す狙いがあった。

診療報酬の引き上げは一方で、患者の窓口負担の増大につながるため、マイナ保険証の普及をかえって阻むとして国会で議論になっていた。厚労省は今後、医師や企業の健康保険組合の代表らで構成する中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)に見直しに向けた議論を要請する。

マイナ保険証に関する対応は、政府が近く決める経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込む方向だ。

新型コロナウイルス禍でデジタル化の遅れは、医療資源の効率的な活用に支障を来すことが明らかになった。25年には団塊の世代が全員75歳以上になり、介護や在宅医療のニーズの拡大で医療提供体制への負荷の増加が見込まれる。デジタル化を急ぎ、少子高齢化や感染症拡大など非常時への備えを充実させる。