日本医師会会長「コロナ第3波」 大阪など新規感染最多

Nikkei Online, 2020/11/12 8:15更新

大阪府新型コロナウイルス対策本部会議に臨む
吉村知事(11日午後、大阪市中央区)

国内では11日、新型コロナウイルスの感染者が午後8時までに新たに1521人確認された。1日あたりの感染確認が1500人を超えたのは8月8日以来。日本医師会の中川俊男会長は11日の記者会見で、全国の新型コロナウイルス感染拡大に関し「第3波と考えてもよいのではないか」との現状認識を示した。

大阪や兵庫などで過去最多を上回ったほか、東京、神奈川、北海道などの各地で感染状況の悪化が鮮明になってきている。新型コロナ対策を助言する厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」は11日、感染状況を分析し、10月から新規感染者数は増加傾向にあり「11月以降その傾向が強まっている」との見解を示した。

特に、北海道や大阪、愛知を中心に増加が見られ全国的な感染増加につながっているという。一部地域では感染拡大のスピードが増しており、「このまま放置すれば急速な感染拡大に至る可能性がある」として注意を促した。

インフルエンザとの同時流行に備え、大阪府は検査体制を強化するほか、神戸市では重症患者の専門病棟を開設。感染の「第3波」への警戒が一段と強まっている。

府によると、11月5~11日の新規感染者は計1185人。直近2週間で約1.8倍に急増しており、「第2波」のピークだった7月29日~8月4日(1290人)に迫る勢いにある。

重症や死亡に至るケースが増加しているのが特徴だ。府内では10月下旬から11月10日まで、新たに29人が死亡。東京都(17人)、北海道(9人)などに比べて死者が多い状況にある。人口10万人当たりでみても、大阪府(0.32人)は東京都(0.12人)を上回る。

死亡が増えた要因には介護施設などでのクラスター(感染者集団)が多発していることがある。6月中旬から11月10日までに死亡した169人のうち、半数以上を医療機関や高齢者施設などが占める。直近の10月28日~11月10日でも高齢者施設や医療機関、児童施設・学校など13カ所で発生。大阪府医師会の茂松茂人会長は「高齢者施設などでは感染が広がると一気に重症化や死亡リスクが高まる」と指摘する。

今後の課題は、重症者の治療を行える十分な医療体制の確保だ。集中治療室(ICU)機能などが備わった病床を206床確保しており、直近の重症病床の使用率は30.6%。ここ10日間では倍増しており、過去最多となった「第2波」(38.3%)に迫る。

独自基準「大阪モデル」では警戒を示す黄信号の点灯が続き、使用率が70%を超えれば「非常事態」を意味する赤信号が点灯する。「これ以上コロナ用に病床を確保すると、救急医療などに影響が出てしまう」(府の担当者)。

そこで府は11月末に完成予定の「大阪コロナ重症センター(仮称)」の活用を視野に入れる。まずは30床を設置し、60床まで増やす予定。重症者専用とする。

過去最多の70人の新規感染が判明した兵庫県。神戸市では11月上旬、市立医療センター中央市民病院(同市中央区)で重症者専用の臨時病棟が新たに設立。重症患者用の36床を別棟に分け、院内感染を防ぐことができる。

冬に向け、検査体制の拡充も欠かせない。府は感染のピーク時には1日約2万2千件の検査が必要と試算。コロナの検査に協力する医療機関は約970カ所(10日時点)を確保した。

府は11月中に診療所での検査をスタートさせ、1日の検査数を最大約5千件にする計画。だがピーク時の検査数の実現には最大約1500カ所が必要で、今後保健所から直接診療所に呼びかけるなどして、検査機関の積み増しを図る。

茂松会長によると、医師らが1人ずつで運営している診療所も少なくなく、負担増を警戒する声もあるという。ビルのテナントとして入居している診療所ではゾーン分けが難しい場合もあるといい、「検査体制に地域差が出てしまう可能性もある」と明かす。

無症状や軽症の感染者が宿泊施設で療養するケースの増加も予想される。約1500室に対し、療養者数(11日時点)は315人。検査数が増えれば一気に療養者も増える可能性があり、積み増し計画を検討せざるを得ない。

(大元裕行、大畑圭次郎)