英でコロナ変異種、欧州各国が相次ぎ渡航禁止に

Nikkei Online, 2020年12月20日 23:54更新


外出規制が強化される前日、ロンドンの繁華街は
買い物客らであふれた(19日、ロンドン)=AP

【ロンドン=佐竹実】英国で新型コロナウイルスの変異種による感染が拡大している。感染力が強いとされ、オランダやイタリアなど欧州4カ国が英からの渡航を禁止する見込み。欧州各国では感染拡大が続き、外出制限を強化しているが、変異種という新たな不安要素が浮上してきた。

変異種は従来のウイルスよりも最大70%感染しやすい可能性があるという。ロンドンでの感染者のうち変異種が占める割合は11月18日には28%だったが、12月9日には62%まで増えた。

英メディアによると、オランダでも同じ変異種が確認され、同国政府は20日、英国からの渡航を禁止した。英BBCなどによると、伊とベルギー、オーストリアも英からの渡航を禁止する見込みで、欧州域内に影響が広がっている。

変異種の感染拡大を受けて、欧州連合(EU)のミシェル大統領、フォンデアライエン欧州委員長、メルケル独首相、マクロン仏大統領は20日、対応を電話で協議した。

仏AFP通信によると、世界保健機関(WHO)の欧州本部は欧州各国に対して「警戒を強めるよう」呼びかけた。「初期的なデータからすると、従来より感染力が強いかもしれないが、より毒性が高まっているとの証拠はない」とも指摘している。

【関連記事】

ジョンソン英首相は19日、コロナの追加対策を発表した。20日から2週間、食品スーパーなどを除く店舗の営業ができなくなるほか、規制地域外への移動も禁じる。クリスマス期間に親族らと会える特別措置もなくす厳しい内容だ。

ロンドンがロックダウン(都市封鎖)となるのは感染初期の3月、感染が再拡大した11月に続き、3度目だ。19日に英全土で確認された陽性者は約2万7千人、死者は534人と高水準が続いており、医療体制も逼迫している。都市封鎖は失業者の増加などの副作用が大きいが、ジョンソン首相は同日の記者会見で、「国民を守るために正しいことをする」と述べた。

2回目のロックダウンの最中も、ロンドンや英南東部などでは感染者が増えており、変異種が広がっていた可能性がある。ジョンソン首相は「ウイルスが攻撃の仕方を変えるのであれば、我々は対策を変えなければならない」と国民に理解を求めた。

欧州では感染拡大が続き、都市封鎖が相次ぐ。伊政府は18日、クリスマスや年末年始を原則外出禁止にすると発表した。厳しい規制を避けてきたスウェーデンも18日、公共施設の閉鎖や飲食店での人数制限を決めた。ロベーン首相は足元の感染拡大を受け、「専門家は第2波を過小評価していた」と述べた。

都市封鎖は規制と緩和の繰り返しになるため、持続的な対策ではないとの指摘がある。だが、死者が増え続け、他に効果的な対策がない中で、各国は経済活動の停止を選ばざるを得ないのが現状だ。

期待がかかるのがワクチンだ。英政府は8日から、米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンの接種を始めた。これまでに高齢者ら35万人が接種を受けている。英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大が開発するワクチンが承認されれば、より多くの人にワクチンが行き渡ると期待されている。

EUでは27日からファイザー・ビオンテックのワクチンの接種が始まる予定だが、多くの人々に行き渡って効果が発揮されるには時間がかかる。ワクチンが普及して感染が落ち着くまで、都市封鎖という劇薬を選ばざるを得ない状況が続く可能性がある。