Nikkei Online, 2021年5月14日 17:14更新
政府は新型コロナウイルスに対応する緊急事態宣言の対象に北海道、岡山、広島の 3道県を追加する。期間は5月16日から31日まで。 宣言に準じた措置をとる「まん延防止等重点措置」の適用対象には群馬、石川、熊本の 3県を加える。
政府は14日午前の専門家で構成する基本的対処方針分科会で、群馬、石川、岡山、広島、熊本の5県を重点措置とする案を諮問した。 より強い措置が必要だとの意見が出たため、政府が内容を変更して再諮問し了承された。
西村康稔経済財政・再生相は14日午後、衆参両院の議院運営委員会で変更理由を説明した。分科会のメンバーから「国民に強いメッセージが必要だ、との指摘があった。専門家の意見を尊重した」と強調した。
「分科会で『変異ウイルスの拡大や医療の逼迫が数値で見える以上に悪い状況にある』との指摘を受けた」とも語った。首相が「専門家の意見を尊重して対応するように」と諮問案の変更を指示したと明らかにした。
政府は14日夜に新型コロナ対策本部を開いて正式決定し、菅義偉首相が記者会見して3道県を宣言地域に追加した理由などを説明する。
基本的対処方針も一部変更する。インドで確認された変異ウイルスを巡り、ゲノム解析などによる検査体制を全国で強化すると盛り込む。
正式決定すれば宣言地域はすでに対象の6都府県とあわせて9都道府県となる。重点措置地域に加える3県の期間は5月16日から6月13日までとする。
加藤勝信官房長官は14日午前の記者会見で、閣議後に首相と西村氏、田村憲久厚生労働相の4人で専門家の意見を踏まえて政府の再諮問案を決めたと表明した。
北海道は新規感染者数が急激に増加しているため、専門家から重点措置から宣言地域に変更すべきだとの意見が出た。岡山と広島の両県を宣言対象に加えるよう主張した専門家は人口規模が大きい点などを理由にあげた。
宣言地域では酒類やカラオケ設備を提供する飲食店に休業要請ができる。百貨店やショッピングセンターなどの大型商業施設は営業時間の短縮を要請できる。自治体の判断で休業要請などの強い措置も可能だ。
イベントは 5千人もしくは定員の 50%の少ない方を観客上限とする。
重点措置は知事が市区町村など地域を絞る。繁華街などを対象に集中的に対策を取ることを想定する。
重点措置の対象地域でも飲食店に午後8時までの時短営業を要請できる。知事の判断で感染リスクが高い飲食店での酒類やカラオケの提供に関し、終日自粛を求められる。
14日時点で東京、大阪、京都、兵庫、愛知、福岡の6都府県に宣言を適用している。重点措置は北海道と千葉、神奈川、埼玉、岐阜、三重、愛媛、沖縄の7県が対象だ。
飲食店などが命令に違反した場合の過料も異なる。宣言下では30万円以下、同措置は20万円以下になる。同措置は時短のみ要請でき、休業要請は対象にならない。
Nikkei Online, 2021年5月15日 5:22更新
期間は5月16日から31日まで。対象地域は現在の6都府県とあわせて合計9都道府県に拡大する。宣言に準じた措置をとる「まん延防止等重点措置」の適用対象には群馬、石川、熊本の3県を加えて合計10県となる。追加3県の重点措置の期間は5月16日から6月13日までとする。
首相は「変異ウイルスが広がるなかで今が感染を食い止める大事な時期だ。専門家の意見を尊重し、追加の判断をした」と語った。「専門家からより強いメッセージを出すことが必要という意見があった」とも明らかにした。
政府が14日午前の基本的対処方針分科会に諮問した当初案は群馬、石川、岡山、広島、熊本の5県を重点措置とする内容だった。より強い措置が必要だとの意見が出たため、政府が内容を変更して再諮問し了承された。
分科会の尾身茂会長は「率直に政府に述べるのが責任だと思った。政府が非常に早い対応をした」と評価した。北海道を宣言対象に加えた点は「(宣言を)出さないと医療の負荷が大変になる」と問題提起したと話した。
首相は6月以降の緊急事態宣言の扱いは宣言終了の時点で「改めて判断する」と述べた。
宣言発令を全国に拡大する可能性には否定的な見方を提示した。「全国一律というよりも地域ごとに効果的な対策を講じることが重要だ」と主張した。
尾身氏は現在の感染状況は「全国的なまん延という状態では今のところない」と指摘した。14日の分科会で全国を対象にするよう発言した人はいなかったと言明した。
首相はインドで流行する変異ウイルスが国内で感染拡大した場合への備えを問う質問には「医療用酸素は十分確保している。引き続き必要な人に供給できるようしっかり対応していきたい」と答えた。大阪府の医療提供体制に関しては「国と府が一体となって病床確保をしている」とも強調した。
新型コロナ対策の切り札と位置づけるワクチン接種について「一日も早く安心できる日常を取り戻すため接種を加速する。全ての自治体をしっかりサポートする」と強調した。ワクチン接種が進むまでは、マスク着用や手洗い、「3密」の回避などの感染予防策を徹底するよう呼びかけた。
ワクチン接種を巡っては「なかなか予約が取れないなどご不便をおかけしていて大変申し訳なく思う」と陳謝した。
高齢者の接種の見通しがついた市町村では6月をめどに基礎疾患を持つ人など一般の人にも接種できるとの見通しを示した。「企業の産業医の協力を得て、職場の人への接種を進める」とも訴えた。
今夏の東京五輪・パラリンピックは「対策を徹底した上で、国民の命と健康を守り、安心、安全の大会を実現することは可能だ」と予定通りの開催に改めて意欲をみせた。
開催のメリットについて「世界最大の平和の祭典で、国民に勇気と希望を与えるものだと認識している」と強調した。「感染が拡大するなかで様々な意見があるのは承知している」とも述べた。
地方自治体からは選手や大会関係者が新型コロナに感染した場合の指定病院の設置が困難との声があがっている。この点を聞かれると「地域医療に支障をきたさないように調整をしている」と答えた。
来日する大会関係者の人数規模を巡っては精査中だと明かし、当初想定に比べて「はるかに少なくなると思う」と話した。
行動制限に協力しなかった人には「強制的に退去できることも含めて検討している」と発言した。
報道関係者らの宿泊施設は「特定のホテルを国として指定したい」と語った。「国民と接触することがないように今しっかり対応している途中だと報告を受けている」とも言及した。
尾身氏は五輪について「仮に開催するのであれば医療への負荷を評価するのは開催する人たちの責任だ」と指摘した。開催による感染リスクや医療にかかる負担を事前に評価する必要性を提起した。
緊急事態宣言は 14日時点で東京と大阪、京都、兵庫、愛知、福岡に適用している。
重点措置は 北海道と千葉、神奈川、埼玉、岐阜、三重、愛媛、沖縄の8道県が対象だ。