首都圏3県・大阪への宣言拡大決定 東京・沖縄は延長

Nikkei Online, 2021年7月30日 17:17更新


新型コロナ対策本部の会合で首都圏3県と大阪府
への宣言発令を表明する菅首相(30日、首相官邸)

政府は30日の新型コロナウイルス対策本部で、埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と大阪府に新型コロナ対策の緊急事態宣言を発令すると決定した。期間は8月2~31日まで。8月22日までの東京都と沖縄県への宣言も31日まで延長する。宣言の対象は計6都府県に広がる。飲食店の酒類提供は一律停止する。

北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県は宣言に準じた対策をとれる「まん延防止等重点措置」を新たに適用する。首都圏3県や大阪府は現在、重点措置を適用している。8月2日から宣言に切り替える。

西村康稔経済財政・再生相は30日午前、専門家で構成する基本的対処方針分科会に案を示した。午後に衆参両院の議院運営委員会で政府の方針を報告した。

菅義偉首相が対策本部後に記者会見し、判断の背景や対策などを説明する。都道府県間の不要不急の移動を控えるよう呼びかける。首都圏の感染拡大の全国への波及を抑える狙いがある。

田村憲久厚生労働相は30日の記者会見で、感染者急増の影響で「医療の逼迫が起こりつつある」と言明した。

西村氏は分科会で「このまま高いレベルで陽性者の数が続けば病床逼迫につながっていく」と強調した。宣言などの期間を8月31日までにした理由を「現役世代にもワクチン接種が進むことによる効果を見極めるため」と説明した。

不要不急の外出は自粛するよう求めた。政府が提示した基本的対処方針の案で「必要がある場合にも極力家族や普段行動をともにしている仲間と少人数で」と記載した。

重点措置地域の酒類提供について前提として新たに「感染が下降傾向にある」などを加えた。これまでは感染対策の徹底などを条件に知事の判断で提供を容認してきた。宣言地域に移行する埼玉、千葉両県と大阪府は条件付きで認めていた。

西村氏は「厳しい感染状況を踏まえ酒類の提供は原則停止にするなど強い措置を講じたい」と説いた。飲食店や路上飲みに関し対処方針案は「実地の呼びかけなどの強化」に取り組むと記した。

西村氏は足元で40~50歳代の入院や重症化が増えていると指摘した。同年代のワクチン接種で一定の状況改善が見込めるとの考えも表明した。

「40~50歳代のワクチン接種の状況とあわせて、重症化の状況や病床使用率など医療提供体制の負荷に着目した分析・検討を進めたい」と話した。

西村氏によると、分科会では宣言などの解除に向け「出口の指標のあり方についても検討していくべきだ」との意見が出た。加藤勝信官房長官は記者会見で「国民に宣言の解除に向けた道筋も示していきたい」と触れた。

西村氏はワクチン接種の進展に伴う経済活動の再開に向け、接触者確認のQRコードを使った技術の検討に意欲を示した。「飲食店やライブハウス、イベントなどで活用できないか実証を含めて検討を進めたい」と発言した。

対処方針案に「ワクチン接種率の向上がもたらす感染レベルや医療負荷への影響、社会経済活動の変化など今後の見通しについて技術実証などをしながら検討を進める」と明記した。

29日に国内で新たに報告された新規感染者は初めて1万人を超えた。東京都は3865人、神奈川県は1164人で過去最多を更新した。感染力の強いインド型(デルタ型)の影響とみられる。

首相は同日、首相官邸で田村憲久厚生労働相ら関係閣僚と話し合った。協議後、記者団に「強い危機感をもって対応している」と述べた。ワクチンの接種と19日に特例承認したばかりの新型コロナ向け治療薬「抗体カクテル療法」の活用を対処策に挙げた。

政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は29日、直近の感染拡大について「大変な危機感がある。ワクチン以外に感染を下げる要素があまりない」と主張した。「最大の危機は社会一般で危機感が共有されていないことだ」とも言及した。

12日に都へ宣言を発令した後も人出の減少は鈍い。厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」は宣言の効果を「滞留人口の減少は限定的で感染拡大を防ぐには至っていない」と分析した。

 

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