緊急事態13都府県に拡大 政府決定、9月12日まで

変異型対策を強化 首相「最優先は医療体制の構築」

Nikkei Online, 2021年8月18日 11:20



スクランブル交差点を渡る人たち
(14日、東京・渋谷)

政府は17日、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言に兵庫、福岡など7府県を追加すると決めた。期間は20日から9月12日までで、8月31日が期限の東京など6都府県の宣言も延長する。感染力の強い変異ウイルスのインド型(デルタ型)の拡大を受けた感染防止対策を強化し、百貨店など大型商業施設への入場を制限する。

17日に首相官邸で開いた政府の新型コロナ対策本部で決定した。宣言地域に追加するのは茨城、栃木、群馬、静岡、京都を含む7府県で、いずれも重点措置から移行する。東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、沖縄の6都府県とあわせて宣言は13都府県に増える。

宣言に準じる「まん延防止等重点措置」の範囲も広がる。新たに宮城、山梨、富山、岐阜、三重、岡山、広島、香川、愛媛、鹿児島の10県を加える。重点措置を適用中の北海道、福島、石川、愛知、滋賀、熊本とあわせて16道県に上る。

菅義偉首相は17日の対策本部で「経験のない感染拡大が続いている。医療体制の構築、感染防止の徹底、ワクチン接種を3本の柱として対策を進める」と指摘。「最優先課題は医療体制の構築だ。症状が重い方が入院できるように病床を確保し、ホテル療養を含め最大限の上積みをする」と話した。

その後の記者会見で、宣言の解除は医療提供体制の確保が前提だと説明し「ワクチンの接種状況や重症者数、病床利用率などを分析し、適切に判断する」と語った。

デルタ型への置き換わりが進み、全国の新規感染者数が13日に初めて2万人を超えるなど地方でも感染拡大に歯止めがかからない。宣言と重点措置の地域は飲食店での酒類提供の停止を求め、追加の感染対策を講じる。

専門家はクラスター(感染者集団)が発生しやすい場所として百貨店の食品売り場やショッピングセンターなどの商業施設を挙げる。政府は施設への入場制限を要請するよう知事に促す。

西村康稔経済財政・再生相は17日「(標準的な食品スーパー並みの)1千平方メートルを超える大型商業施設は入場整理の徹底を国の基本ラインとする」と述べた。土日や休日は知事の判断で休業を要請することも可能だと説明した。

専門家の提言を踏まえ、政府の基本的対処方針に「混雑した場所への外出の半減を強力に呼びかける」と記した。経済団体を通じて企業にテレワークや休暇の取得促進で出勤者数の7割減を求める。

外出自粛やテレワークの徹底の要請に強制力はなく、度重なる宣言発令で外出自粛への協力を得にくくなっている。パーソル総合研究所(東京・港)が7~8月に全国の2万人を対象に実施した調査によると、正社員のテレワーク率は27.5%にとどまる。

西村氏は17日の専門家の会合で「個人の行動制限に関する法的仕組みの検討を進めてほしいとの意見があった」と明かした。新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は「個人も感染リスクが高い行動を避けることが可能になる新たな法律の仕組み」などが必要だと訴えた。

病床逼迫への対策もテコ入れする。軽症・中等症患者の重症化を予防する「抗体カクテル療法」を積極活用し、宣言と重点措置の地域の医療機関にあらかじめ配布する。症状悪化に備えて酸素ステーションも配備する。

入院せず自宅や宿泊施設で療養する患者への目配りも必要になる。厚生労働省は16日、電話やオンラインで診療した場合の診療報酬を2倍超に引き上げた。初診の報酬は従来の2140円に2500円を上乗せする。

往診の場合は7200円にコロナ対応で9500円を加えており、遠隔診療よりなお高い。医師からは「オンラインでは患者の状態がわかりにくい」との声もある。診療報酬の引き上げがオンライン診療の普及につながるかは見通せない。

宣言と重点措置の対象は計29都道府県となり、全国の6割がいずれかの措置が適用される。宣言地域だけで日本の人口の55%をカバーする計算になる。