オミクロン派生型、50カ国超で確認 流行長引く要因か

Nikkei Online, 2022年2月8日 15:40

フィリピンでワクチン接種を受ける子ども。
同国ではオミクロン型の派生型「BA.2」が
直近の感染例の98%を占める=ロイター

新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の派生型「BA.2」が世界的に拡大している。世界保健機関(WHO)の2月1日付の報告書によると、BA.2が確認されたのは日本を含めて57カ国に上る。フィリピンやインド、デンマークなどでは直近の感染者の過半を占める。感染力の強さが指摘されており、一部の国で流行が長引く要因の1つになっている可能性もある。国内では解析例の1%未満にとどまるが今後広がる懸念はあり、第6波がピークに達しても減少を妨げる要因になりえる。


オミクロン型のうち、まだ多くの国では「BA.1」が主流だが、BA.2の比率が高い国が増えてきた。デンマーク国立血清研究所などによると、同国のBA.1の割合は2021年12月末には解析例の約72%を占めたが、その後BA.2が逆転し、22年1月下旬には約79%を占め入れ替わった。同国では1月末に新規感染者数のピークは迎えたものの、予断は許さない。

英国の保健当局によると、ロンドンがあるイングランドでBA.2の感染者が1000人以上確認されている。ドイツでもBA.2がBA.1やデルタ型より速いペースで広がっているという。欧州では経済や社会の正常化を模索するなか、BA.2の拡大に神経をとがらせている。

オミクロン型が初めて報告された南アフリカもBA.2が広がっている。21年12月中旬にBA.1の流行がピークに達したが、1月下旬から新規感染者数は下げ止まりの傾向にある。南ア当局によればBA.2の割合は21年12月の4%から22年1月には23%に増えた。

変異型の情報を公開している米スクリプス研究所のデータベースによると、アジアでもフィリピンでは直近の感染者に占めるBA.2の割合が約98%、インドでは約63%となり、BA.2が主流になった。各国で警戒が高まっている。

BA.2はBA.1よりも感染力が高いとの報告がある。感染者が実際に何人にうつすかを示す感染力の指標「実効再生産数」については、京都大学の西浦博教授らがデンマークのデータをもとに、BA.2がBA.1よりも18%高いと報告している。

感染者が周囲の人にうつす二次感染率が高いという報告もある。デンマーク・コペンハーゲン大学などがまとめた第三者による検証前の論文によると、家庭内でBA.2の感染者からうつる確率は39%と、BA.1での29%よりも約3割高く推定された。ワクチンの接種状況などによって違いはあるが、BA.2への感染しやすさはBA.1の2倍以上だった。

重症化リスクについての報告はまだ限られている。WHOは詳細な調査を呼びかけている。

一方、国内の報告例はまだ少ない。国立感染症研究所によれば、2日公表時点で国内のゲノム解析で見つかったBA.2への感染例は約50件にとどまる。ただ解析例に占める割合をみると、22年1月第1週の約0.3%から第3週には約0.8%とわずかに増えた。気になるのは検疫での報告数だ。2月2日までに318件となり、今後国内の報告数を増やす要因にもなりうる。

第6波は近いうちにピークに達するという見方がある。実効再生産数は年初に1.5を超えていたが、1月17日時点では1.19まで下がった。実効再生産数が1を下回ると新規感染者数は減少に転じる。

厚労省の新型コロナの感染状況を分析する専門家組織「アドバイザリーボード」座長の脇田隆字国立感染症研究所所長は「普段会わない人が会う機会で感染拡大する。そこに新しい変異株が重なれば感染拡大の機会が増える」と指摘する。現状ではBA.1とBA.2はゲノム解析を行わないと区別できないため、専門家会合では解析数を増やすべきだといった意見も出たという。

国内感染者の9割以上はオミクロン型になったが、より病原性の高いデルタ型の感染例も国内のゲノム解析例の約3%を占めるなど感染が続く。BA.1やBA.2とともに流行状況を詳細に監視することが必要だ。

<< Return to Top