相続で失敗しない 戸籍・財産調べ、速やかに

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家族を亡くすと誰もが相続に直面します。相続では亡くなった人の財産を特定の人で分けて、引き継ぎます。財産の多い少ないに関係なく、一定の期間に手続きをする必要があります。その煩雑さに戸惑う人も少なくありません。

Q 相続で最初にすべき手続きは何ですか。

A 多くの場合は戸籍集めです。財産の分け方を決めるには、その対象者(相続人)が誰かを確認する必要があります。行政書士の汲田健さんは「亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本と子ら相続人全員の戸籍謄本が必要」と話します。亡くなった人の戸籍を取得すれば、誰が相続人かが分かります。また、相続人の戸籍を取得すれば生存が確認できます。

Q なぜ出生から死亡までの戸籍が必要なのですか。

A 戸籍は法改正や婚姻などによって新しく作られます。その際に、すべての情報が引き継がれるとは限らないためです。本籍地のある役所で「出生から死亡まで」と伝えれば、そこで入手できるすべての戸籍が手に入ります。本籍を移していた場合は、以前の本籍地の自治体から取り寄せなければなりません。亡くなった人の兄弟姉妹が相続人のときは、両親の出生から死亡までの戸籍も必要です。汲田さんは「全部で数十通を取得する人もいる」と言います。

Q 次は何ですか。

A 亡くなった人の財産を調べます。一般には預貯金や株式といった金融資産や不動産がメーンです。亡くなった人がエンディングノートなどにまとめていればすぐに分かりますが、そうでないと確認するのは大変です。最近ではインターネットで取引する銀行や証券会社の口座を持つ人が増えています。通帳や郵便物など分かりやすい手掛かりがない場合もあるので注意が必要です。

Q 時間がかかりそうです。

A 財産調べは「3カ月以内にしたい」と司法書士の勝猛一さんは話します。多額の借金や不要な不動産が見つかった場合、相続人は相続を放棄する選択肢があります。しかし、それには相続開始を知ったときから3カ月の間に手続きをする必要があるためです。判明した財産は目録や一覧表などにしておくと、その後の手続きで役立ちます。

Q 財産はどのように分けるのですか。

A 相続人が全員で話し合い、どの財産を誰が引き継ぐか決めます。これを遺産分割協議といいます。話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作り全員で署名・押印します。円滑に進めるには「納骨や四十九日の法要など関係者が集まる機会に事前に相談しておくとよい」と勝さんは助言します。

Q 財産を引き継ぐにはどのような手続きが必要ですか。

A 自宅や土地などの不動産は受け継ぐ人の名義に変更します。不動産を管轄する法務局に戸籍謄本や相続人の住民票の写しと一緒に登記申請書を提出します。銀行の預貯金などは相続の発生を知らせると入出金ができなくなります。戸籍謄本などの書類をそろえて解約の手続きをすれば、亡くなった人の口座から残額を引き出したり、引き継ぐ人の口座に移したりできるようになります。株式は売却する場合でも、いったん引き継ぐ人の証券口座に移します。同じ証券会社に口座がなければ新たに開設しなければなりません。

Q 相続で税がかかることがあると聞きます。

A 遺産の総額が一定以上の場合は相続税を納めます。その場合は申告書を作り、亡くなった人の住所地を管轄する税務署にたくさんの必要書類と一緒に提出し、納税します。相続税には様々な特例があります。特例を利用した結果、税金がゼロになる場合は申告書を提出しなければなりません。難しければ税理士に頼むのも選択肢です。納税までの期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内で、意外と時間はありません。

(土井誠司)