Source: Nikkei Online, 2023年5月10日 4:52
【オーランド(米フロリダ州)=清水石珠実】米IBMは9日、法人顧客向けの人工知能(AI)「ワトソンX」を発表した。処理能力の精度やデータの管理能力を高め、企業が安心して使えるように工夫した。
米オープンAIが開発した対話型AI「Chat(チャット)GPT」の登場を受けて、企業の間で高まっているAI導入ニーズに対応する。
IBMは9日、年次イベントでワトソンXを発表した。アービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)は「AIの導入で企業は生産性を大幅に高められる」と語った。
インフレ率が高止まりするなかで、企業はいままでより少ない人材でより質の高い業務に対応することが求められている。クリシュナ氏は、こうした状況の克服には AIの活用が有効だと説明した。
ワトソンXは、顧客企業が自社が持つ独自データを反映することで IBMの最新鋭の AIを簡単に使える仕組みを採用した。各社の要望にきめ細かく応じるため、AI専門のコンサルティング1000人を充てる計画を明らかにした。
オープンAIの対抗馬として注目を集める AI専業のスタートアップ企業「ハギング・フェイス」との提携も発表した。
クリシュナ氏は今月上旬、米ブルームバーグ通信の取材で「IBMでは長期的に AIが担う職種について新規雇用を停止する可能性がある」と語ったと報じられた。7800人分の事務職が影響を受けるとした。
9日に開いたアナリスト説明会では具体的な数字は示さなかったが、「(人事や在庫の発注など)単純な繰り返し作業に当たるバックオフィス業務職の3割程度が今後5年間でなくなる」との見方を示した。
ワトソンが 2011年に米人気クイズ番組のチャンピオンに勝利して以来、IBMは AIのリーダー的存在だった。だが、導入に高額な費用と手間がかかることなどが響いて、ワトソンは普及に苦戦した。 22年には、ワトソンの技術を使って医療・健康データの管理を手がけていたヘルスケア部門「ワトソン・ヘルス」の一部を米投資ファンドに売却した。