三菱UFJ、地銀20行弱のシステム受託
 「25年の崖」控え


Source: Nikkei Online, 2024年9月25日 19:00

三菱UFJ銀行は日本IBMやIIJと連携し、地銀の基幹系システムの必要な機器や設備を一括で保有する

三菱UFJ銀行は、地方銀行20行弱が顧客の口座管理などの銀行業務の中核に使う基幹系システムを保有する新会社をつくった。日本IBMやインターネットイニシアティブ(IIJ)と連携して運用を一括で受託する。

2025年以降に老朽化した多くの基幹システムが更新時期を迎える「2025年の崖」問題が指摘されており、技術者不足が大幅に強まる可能性が高い。このため基幹系システムの共同利用を一段と進めて人手不足を補う必要性が高まっていると判断した。

これまで多くの地銀は日本IBMやNTTデータといったシステム開発会社の支援を得て、基幹系システムを複数の地銀で共同利用してきた。メインフレームと呼ぶ巨大コンピューターを安定稼働させるのに必要な費用を分担するためだ。

三菱UFJ銀行が中心となってシステムを所有・運用することなどにより、地銀は関連費用を最大で3割ほど減らせるとみている。

三菱UFJ銀が立ち上げた合同会社を通じてシステムを提供する事業を10月から始める。地銀間の共同利用の枠組みでは長野県の八十二銀行を中心とするグループと、福岡銀行などがすでに採用を決めた。

常陽銀行などの陣営も採用する方向で検討に入った。対象行は合計で20行近くとなり、今後さらに拡大する可能性がある。

新事業では三菱UFJ銀が100億円以上を投じ、日本IBMから地銀が利用するためのメインフレームを一括で調達する。機器やソフトの保守は日本IBMが担い、地銀はシステムの利用料を合同会社に払う。

メインフレームは三菱UFJのデータセンターに置き、同行は合同会社から設置料を受け取る。

ネットワーク関連設備やATMなど外部との接続や融資業務で利用する、基幹系に準ずる役割を担うシステムは日本IBMや IIJが受託する。

三菱UFJ銀が地銀の基幹システムの共同化を支援する背景には、メインフレーム維持への危機感がある。

メインフレームは技術者の少ない独特なコンピューター言語を利用しているうえ、富士通が生産終了を決めるなどシステムの維持を危ぶむ声が強い。メガ銀はなおメインフレームを利用しており、地銀の支援が国内の市場維持にもつながるとみる。

メインフレームを巡っては、NTTデータがシステムを手掛ける京都銀行など13行は2月、基幹系システムをクラウド技術を使った新システムに移行すると発表した。

NTTデータは国内の約40地銀と新システムへの移行に向けた交渉を進める。地銀はメインフレームから移行するか、維持するかの判断を迫られている。

仏BNPパリバをはじめ、海外でも大手銀の多くはメインフレームを維持している。ただ「25年の崖」問題もあり、基幹システムを巡る戦略は金融機関以外の一般企業を含めて重要な経営課題となりつつある。