みずほシステム、金融庁が「強行介入」 基幹系改修も

Source: Nikkei Online, 2021年9月22日 20:02

金融庁は22日、システム障害が相次ぐみずほ銀行と持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に業務改善命令を出した。みずほは障害の原因を解明できず、金融当局がシステムを実質管理する異例の処分となる。金融庁が関与を強めても、障害発生の防止につなげられるか不透明な面は残る。

金融庁はみずほのシステム運営を細かく監督し実質的に管理する。幹部は「みずほに原因究明を一任するのはもはや困難」と強調する。

具体的には、みずほがすでに金融庁に提出しているシステム改修計画を書き込んだ工程表の再検証と見直しを求めた。システムが安定して稼働するために不要不急だと判断すれば、改修や更新を延期してもらう。金融庁はシステム改修に伴うリスクを判定し、みずほと連携し障害発生時などの収拾にあたる。

みずほの基幹システム「MINORI」は日本IBM、富士通、NTTデータ、日立製作所の大手4社が参画して作った。金融庁内のシステム検査部隊は複雑に入り組んだシステムを管理することになる。数十人規模のチームで、普段は民間銀行のシステムを検査しているほか、サイバーセキュリティー対策に携わっている。他の金融機関への検査といった通常業務を抱える中で、みずほ関連の業務に回せる人手は限られている。

一方、過去に起きた不祥事の要因や責任を明確にするため立ち入り検査は継続する。処分はあくまでシステム改修時の障害発生を防ぐことが目的で、現時点で経営責任を問うものではないとの位置づけだ。今後の検査で法令違反やガバナンス(企業統治)の欠陥などが見つかれば、金融庁はさらなる行政処分を検討する。

継続する検査の焦点は、システム障害が相次いだ根本的な原因だ。8月に発生した5回目の障害では、機器故障時に備えたバックアップシステムが作動せず複数のエラーが発生した。みずほが4500億円を投じて完成したMINORIの構造上の欠陥があるとの見方も金融庁内でくすぶる。場合によっては大規模な改修が必要となり、みずほにコスト負担が発生する可能性がある。

経営体制見直しも焦点だ。3月半ばまでに起きた4件の障害を踏まえ、みずほは6月15日に坂井辰史社長が役員報酬の50%を6カ月、銀行の藤原弘治頭取は50%を4カ月減らすなどの処分を公表した。相次ぐ障害発生でトップを含めた組織刷新を求める声も出ている。次の作業時にシステムが停止する懸念のある更新作業がいくつか迫っており、金融庁関係者は「次の障害が起きたら経営責任は避けられない」と話す。

システム障害を繰り返すみずほに向けられる視線は厳しさを増している。日銀の黒田東彦総裁は22日の記者会見で「大変遺憾で、金融庁と連携して実態把握につとめていく」と語った。

今回の異例の処分は「銀行の箸の上げ下げまで口を出す」と言われた旧大蔵省時代の護送船団方式に先祖返りしたと受け取られかねない。「過剰介入ではないか」と話す他のメガバンク関係者もいる。金融庁担当者は22日の行政処分の発表の場で「(システム障害の)真因の分析、その結果に基づく対応が重要だ。金融庁として引き続き努力を続けていく」と強調した。抜本的な再発防止策につなげることができるか。みずほだけでなく、金融育成庁への脱皮を目指している金融庁も試されている。