半導体国内生産に補助、政府法整備
 TSMC第1号認定へ

Source: Nikkei Online, 2021年11月7日 17:30


TSMCは10月に日本で初めての工場建設を発表した

政府は先端半導体の生産企業を支援する法制度を整える。需給逼迫時に増産に応じることなどを条件に国内での工場建設に補助金を出す枠組みを定める。台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に新設する工場が認定第1号になる見通しだ。経済安全保障上の重要性が増す半導体を国として安定して確保できるようにする。

高速通信規格「5G」の開発企業を対象とする関連法に新たな重要分野として半導体の追加を検討する。改正法案は12月にも開く臨時国会への提出をめざす。

財源として2021年度補正予算案で数千億円を確保し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に基金を設ける方針だ。補助金を支給する前提として、先端半導体の工場建設を認定するルールを定める。

稼働後の安定的な生産や投資、技術開発の継続などを条件に想定する。需給逼迫時には増産に応じてもらうことも視野に入れる。技術流出の防止を目的とした関連法の順守なども求める。

事業者が提出した計画書を関係省庁で協議して経済産業相が認定する。要件に違反した場合は補助金の返還を求める。

TSMCの熊本県内の新工場が最初の認定対象になる公算が大きい。「総額1兆円規模」(岸田文雄首相)の投資額の最大半額を補助する。国内外の他の半導体メーカーも認定を受ければ支援対象になる。

TSMCは22年から工場建設を始め、24年に量産を始める。自動車で主流の22~28ナノ(ナノは10億分の1)メートル品を製造する。スマホなどで開発競争が進む「最先端」の半導体ではないものの、自動車だけでなく家電など用途は幅広い。

世界貿易機関(WTO)は公正な貿易の支障にならないように政府の産業補助金にルールを設けている。輸出支援を目的とする輸出補助金と、国産の部品や材料の使用を条件に支給する国内産品補助金は「レッド補助金」として協定違反と即刻みなされる。今回の半導体向け補助金はケース・バイ・ケースで違法性を判定する「イエロー補助金」に該当するとの見方が強い。運用次第では外国からWTOに提訴されるリスクもゼロではない。