ドコモ、携帯料金下げへ 廉価ブランドも導入

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Nikkei Online, 2020/12/1 5:27更新

本体ブランドのデータ大容量プランを軸に
価格体系を見直す

NTTドコモが、携帯電話の料金を引き下げる方向で最終調整に入った。主力ブランドのデータ大容量プランを軸に価格体系を見直す。データ容量20ギガ(ギガは10億)バイト分の料金が月額3000円前後の廉価な別ブランドも来春をメドに新たに導入する。主力ブランドでの値下げは大手では初めて。KDDIなどが追随すれば国際的に割高とされた日本の携帯電話料金の下落につながる。

菅義偉政権による携帯大手への料金引き下げ要請に応じる。近く値下げの方針を公表する。ドコモは現在、7ギガバイトを上限にデータ通信量に応じて毎月の料金が4段階に変化するプランと、より大容量のデータ通信を利用するユーザー向けに固定料金を設定したプランを展開している。これらを刷新し、使ったデータの量に応じて課金する方向だ。例えば30ギガバイトを使う場合、現在の7150円の固定料金よりも安くなる。

あわせて毎月20ギガバイトのデータ通信を使う人向けの新ブランドも導入する。料金は3000円前後とする方向だ。KDDIとソフトバンクはそれぞれ傘下の格安スマートフォンブランドで20ギガバイトの新プランを発表済み。いずれも4000円前後で、ドコモの新ブランドの方が割安となる。

新ブランドは手続きやアプリ導入などを利用者自らがネット経由で行う「セルフサービス」を打ち出す。コストがかからず、その分利用料を安くできる。ユーザーが本体ブランドから移行する場合も手数料は取らない。総務省による携帯料金の国際比較(世界6都市調査)では、20ギガバイトの日本のプランが世界で最も高いと問題視されていた。

携帯料金を巡っては11月27日に武田良太総務相が「メインブランドの価格を下げてもらわないと、国民に実感をもってもらえない」と発言。格安ブランドでの対応にこだわるKDDIとソフトバンクをけん制した。ドコモは政府の意向に沿い、主力ブランドも含めた値下げへと踏み切る。利用上限が100ギガバイトで月額7650円としている次世代通信規格「5G」の料金プランも引き下げを検討する。

■ KDDI、ソフトバンクの追加値下げ焦点に

NTTドコモが主力の「ドコモ」ブランドを含めた値下げに踏み切ることで、菅義偉政権が求めてきた携帯料金の引き下げ競争は新たな段階に入る。KDDI、ソフトバンクはドコモに先行してサブブランドで値下げを発表していたが、主力ブランドの料金見直しを含めた追加値下げを迫られそうだ。


ドコモは国内携帯大手3社のなかで、値下げ策を公表していなかった。9月に発表したNTTによるドコモ完全子会社化の手続きが終わる11月下旬まで、収益を左右する施策を対外的に打ち出せなかったためだ。


ドコモが身動きがとれないなか、ソフトバンクとKDDIは10月末にそれぞれサブブランド「ワイモバイル」と「UQモバイル」で、データ容量20ギガ(ギガは10億)バイトで4000円前後の新プランを導入すると公表した。値下げ策で先手を打った格好となった。
ドコモも水面下では値下げ策の検討を始めていた。他社の動向を横目でみながら、あるドコモ幹部は「うちは思い切った施策をとる」と話していた。今回、ドコモが踏み切る値下げ策は、現時点で菅政権の要請にできる限り応じる内容になるとみられる。


20ギガバイトでの割安料金は政府がこれまで求めていたものだ。欧米、韓国など各国と比べ、データ利用が大容量の料金プランが日本は高いと指摘していた。特に20ギガバイトの各国プランを取り出して比較し、値下げを促した。


ただKDDI、ソフトバンクの2社のサブブランドでの値下げ策を巡っては、11月中旬以降、武田良太総務相が「全く意味が無い」と批判した。サブブランドで割安な新プランを出しても、別ブランドでは高額の乗り換え手数料がかかるとし、主力ブランド「au」「ソフトバンク」での値下げを求めた。


政権が主力ブランドの値下げを強力に求め始めた矢先、ドコモが検討している施策はこうだ。20ギガバイトの新プランは別ブランドで出す見通しだが、乗り換え手数料は無料にするとみられる。さらにドコモは大手3社で初めて主力ブランドでの値下げ方針を表明する見込みだ。


ドコモが踏み込んだ対応をとることで、KDDI、ソフトバンクは主力ブランドでの値下げ策を検討せざるを得ない。ドコモが検討している「20ギガバイトで3000円前後」の新プランは2社の新プランと比べ、安くなる見込みだ。サブブランドでの追加値下げも必要となる可能性がある。


3社に対抗する携帯電話の「第4極」として4月に市場参入した楽天も対応を迫られそうだ。楽天はデータ使い放題の「無制限プラン」で2980円を打ち出し、利用者を集めてきた。単純比較できないが、ドコモの新プランは、楽天のプランと料金水準があまり変わらない見通しだ。
後発の楽天は、競合に比べて携帯基地局が足りず、携帯の「つながりにくさ」が指摘される。ドコモの新プランに対抗し、どこまで顧客を拡大できるか不透明さが増しそうだ。


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