Nikkei Online, 2020年12月3日 5:09更新
携帯大手3社の値下げ策がひとまず出そろった。 最後発のKDDIは13日、データ容量の無制限プランを最大約2割引き下げ、20ギガ(ギガは10億)バイトでは月額2480円と大手3社で最安値を打ち出した。NTTドコモやソフトバンクに対抗するが、各社とも主力ブランドの小容量プランは手つかずのまま。楽天なども含め、春商戦に向けて価格競争は続きそうだ。
「工夫しながら最安値を目指した」。KDDIの高橋誠社長は同日、2480円というauのオンライン専用の新ブランド「povo(ポヴォ)」について自信を見せた。顧客の利用に合わせて1日や1週間単位で柔軟に課金する珍しい設計だ。まず200円で24時間データが使い放題となるオプションを用意する。
2020年12月に本体プラン見直しを公表したドコモとソフトバンクに遅れる形で値下げに挑むKDDI。以前に複雑な料金表示で消費者の反発を買った経緯もあり、「次は失敗できない」(幹部)。ポヴォや格安ブランドの「UQモバイル」は家族割引をなくしてシンプルにした。
UQは3プランを500円ずつ値下げし、うち2つは5ギガずつ増量した。余ったデータ量は翌月に繰り越せる。auの高速通信規格「5G」と4Gのデータ無制限プランは月額6580円に設定。無制限は約1~2割の値下げだが、ドコモやソフトバンクと同水準となった。
携帯料金を巡っては政府が「海外と比べて割高」とした20ギガプランの見直しに注目が集まっている。今回で3社の対応がそろった。調査会社のMM総研によるとスマホの月平均データ利用量は約7ギガだが、横田英明常務は「動画配信などを見る若者にとって20ギガは魅力。5G時代もデータを大量消費する」と、同プランの重要性を語る。
1回5分以内の通話かけ放題を含めた料金は3社とも2980円の同額になるが、特色は三者三様だ。ドコモの「アハモ」は海外ローミングができ、ソフトバンクはLINEのアプリが使い放題。KDDIのポヴォはカスタマイズ機能に加え、アプリで通話して電話機能を使わない人は年6000円安くなる。高橋社長は会見で「月に電話が10分未満の若年層は6割以上」と強調した。
だが、いずれも提供開始は3月だ。春商戦が始まってみなければ、実際にどれだけ顧客が動くかは分からない。開始を前に、「ドコモとソフトバンクも通話を切り離した2480円で追随するかもしれない」(通信事業者)との見方もある。
日本通信など格安スマホ勢は20ギガで2000円を切るプランを出す予定だが、UQモバイルやソフトバンクの「ワイモバイル」の低価格化で、生き残り競争も激化しそうだ。
次の焦点は楽天の対抗策と、大手3社の小容量プランの見直しだ。楽天はデータ無制限で2980円に設定するが、カバーエリアが狭いことに加え、価格面での優位性が薄れつつある。12日には楽天モバイルの社員が、前に勤めていたソフトバンクの技術情報を不正に持ち出したとして不正競争防止法違反(営業秘密領得)容疑で逮捕された。
さらに大手3社の20ギガプランは、手続きがオンラインのみ。店頭でのサポートが必要で少量のデータしか使わない利用者からは、主力の小容量プランの値下げを求める声も上がりそうだ。
特に20年代半ばに従来型携帯電話「ガラケー」で使われる3Gの通信サービスが終了すると、シニアのスマホ移行が進む。各社はサブブランドで低容量を用意しているものの、「利用者の声を聞き、小容量でも何らかの対応をする必要があれば検討する」(KDDI)。一段の価格競争の可能性もある。
(中藤玲)