無線LAN Wi-Fi


高速なルーターに交換しても速度が出ない、無線LAN機器の謎に迫る

Source: Nikkei XTECH, 2021.09.08

 企業や家庭で使うネットワークは、LANケーブルを使って機器をつなぐ有線LANと、電波を使って機器をつなぐ無線LANに分けられる。無線LANは有線LANと違い、同じ規格に対応した製品同士で接続してもその規格の最高速度とはほど遠い速度でしか通信できない。

 例えば、有線LANの規格「1000BASE-T」に対応した機器同士を接続すれば、1000BASE-Tの最高速度1Gbpsに近いスループット(実測した速度)で通信できる。一方、無線LANの規格である「IEEE 802.11ax」の最高速度は9.63Gbpsだが、スループットが1Gbpsを超えないことはよくある。

 また無線LANは同じ規格に対応した製品でも、対応する機能によって最高速度が異なる場合がある。こうした無線LANの特性や規格のため、「より高速なルーターに交換したのに速度が上がらない」といった失敗が起こりやすい。無線LANに関する知識を身につければ、こうした失敗を減らせるだろう。ここでは、無線LAN機器の製品選びに役立つ専門用語を解説する。


最新規格はWi-Fi 6

現在販売されている無線LAN機器が対応する最新規格はIEEE 802.11axである。ところが、IEEE 802.11axに対応している無線LAN機器のパッケージを見ても、IEEEから始まる規格名が確認できないことがある。代わりに「Wi-Fi 6」と記載されていることが多い。このWi-Fi 6はIEEE 802.11axの愛称である。

Wi-Fi(ワイファイ)とは、無線LAN機器の普及促進を図る業界団体「Wi-Fi Alliance」が規定した相互接続性の試験を合格した機器が名乗れるブランド名である。無線LANそのものを指す言葉として使われることもある。

Wi-Fi 6という愛称はIEEE 802.11axが登場したときに導入された。Wi-Fi 6の「6」はWi-Fi規格の6世代目を表す。それと同時に従来規格のIEEE 802.11acは「Wi-Fi 5」、IEEE 802.11nは「Wi-Fi 4」という愛称を使うようにWi-Fi Allianceが定めた。

 ただ愛称を使わずに、規格名としてIEEE 802.11axを略した「11ax」「ax」、IEEE 802.11acを略した「11ac」「ac」といった名称をパッケージに載せている製品もある。最新のWi-Fi 6対応製品を購入するときは、Wi-Fi 6や11ax、axといった文字を探すとよい。


(出所:バッファロー)

同じ規格でも最高速度が異なる

 無線LAN対応製品は同じ規格に対応していても、機器によって最高速度が異なる。無線LANルーターやパソコンなどを購入するときは、規格だけでなく最高速度も確認しておきたい。

 無線LANルーターの場合、その最高速度は製品の仕様やパッケージなどに大きく記載されている。5GHz帯と2.4GHz帯の両方の速度が記載されているが、高速な5GHz帯の速度を重視する。一部の製品は、5GHz帯と2.4GHz帯の最高速度を加算し、速度の数値を大きく表記することがある。その場合も、仕様には5GHz帯と2.4GHz帯の速度が記載されているので、その5GHz帯の速度を確認すればよい。

 なお、Wi-Fi 6の速度で接続できるのは、Wi-Fi 6に対応した機器同士のみとなる。Wi-Fi 6対応ルーターにWi-Fi 5対応パソコンを接続すると、接続はWi-Fi 5となる。その逆も同じだ。製品仕様にはその場合の最高速度も記載されているため、古い機器が混在している環境ではその速度も確認しておいたほうがいいだろう。


(出所:バッファロー)

 Wi-Fi 6対応のノートパソコンの場合、ほとんどが無線LANのボードに米Intel(インテル)の「Wi-Fi 6 AX200」か「Wi-Fi 6 AX201」を採用する。その最高速度は5GHz帯で2.4Gbps(2401Mbps)だ。Wi-Fi 6対応の無線LANルーターを購入するときは、それと同じかそれ以上の最大速度を持つ無線LANルーターを選ぶと、性能を十分に発揮できる。スマートフォンやタブレットなどは、5GHz帯の最高速度が1.2Gbpsの製品が多い。もしスマホだけを接続するのであれば、最高速度が1.2Gbpsで安価な無線LANルーターを選ぶ手もありだろう。


(出所:マウスコンピューター)

 Wi-Fi 6対応製品は、ほぼすべてがWPA3に対応する。このWPA3は、無線LANの最新の暗号化規格だ。現在、無線LANの暗号化はWPA2が広く使われているが、2017年に第三者がデータを傍聴できる脆弱性が発見されてしまった。その脆弱性を悪用される条件はかなり限られているのでほとんど心配する必要はないが、WPA3はこの脆弱性を解消しているのでより安心して使用できる。

 WPA3の使い勝手は、従来のWPA2と全く同じだ。ただし、無線LANルーターで暗号化をWPA3に設定しても、WPA3に対応したパソコンやスマホといった子機がないと接続できない。現在売っているWi-Fi 6対応無線LANルーターには、WPA2を併用できる互換モードも備えておりWPA3とWPA2の共存はしやすい。


バッファローの無線LANルーター「WXR-6000AX12S」
の製品仕様ページ。WPA3の対応をうたう
(出所:バッファロー)

スループットを向上させる機能に注目

 無線LANルーターの仕様を眺めていると、バンドステアリングやビームフォーミングやMU-MIMOという言葉を目にする。

 バンドステアリングは、周囲の電波状況を判断し状況に応じて5GHz帯から2.4GHz帯、またはその逆を切り替える機能だ。相互に切り替える機種もあれば一方通行の機種もあり、実装方法は機種によって異なる。バンドステアリングは接続台数が多い環境や、電波干渉が多い場所での利用で効果を発揮しやすい。

 ビームフォーミングは電波の波形を調節し、特定位置の電波の信号強度を引き上げて通信する仕組み。通信速度が向上し、遠距離で通信の安定が期待できる。無線LANルーターは端末の位置を把握しており、端末が動いても利用できる。

 MU-MIMOは、複数台に向けて通信を送信する仕組み。従来の無線LANの場合、複数の端末と通信するときは通信をいちいち切り替える必要があり、端末の台数が増えれば増えるほど速度が低下した。MU-MIMOは、ビームフォーミングを使い電波干渉が起きないよう複数の端末に向け、位相をずらしてデータを送信するため、速度低下が起こりにくい。無線LANルーターだけでなく端末の対応も必要になるが、最新の端末であれば対応している製品は多い。

 MU-MIMOはWi-Fi 5では下りのみ利用できたが、Wi-Fi 6からダウンロードだけでなくアップロードでも活用できるようになった。また、利用できる台数も最大8台に拡張されている。製品では「8 x 8 MU-MIMO」などと記載される。


MU-MIMOは複数台通信時に速度低下が起こり
にくい仕組み。Wi-Fi 6で拡張された機能の1つ
(出所:ティーピーリンクジャパン)

有線LAN端子の規格も確認

 無線LANルーターの有線LANには、最高速度が1Gbpsのギガビットイーサネット(1000BASE-T)が採用されていることが多い。ギガビットイーサネットは10BASE-Tや100BASE-TXといった古い規格にも対応しているため、「1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T」などと記載される。

 製品の仕様にある「RJ-45」は有線LAN端子のコネクターの形状を表す。「RJ」はRegistered Jackの意味で「登録された端子」を意味する。

 有線LANにギガビットイーサネットより高速な10ギガビットイーサネットやマルチギガビットイーサネットを採用した製品もある。10ギガビットイーサネットの規格名は10GBASE-Tで、その名の通り10Gbpsが最高速度だ。マルチギガビットイーサネットには、最高速度が5Gbpsの5GBASE-Tと同2.5Gbpsの2.5GBASE-Tがある。


無線LANルーターの上位機種には10ギガビット
イーサネットやマルチギガビットイーサネットに
対応する製品が多い。
写真の製品はWAN側とLAN側のそれぞれに10ギガ
ビットイーサネットに対応する端子を備える
(出所:バッファロー)

 

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