民放キー5局、ネット同時配信出そろう テレビ離れ対応

Nikkei Online, 2022年4月11日 15:52更新

民放5系列が見逃し配信サービス「TVer(ティーバー)」
で午後7~11時の番組を中心に同時配信する

テレビ番組のインターネット同時配信(リアルタイム配信)が11日から、民放の5系列で始まる。日本テレビはすでに実施していたが、ほかの4系列を含め民放キー5局が出そろう。視聴者は全国一律で同じ番組を見られるようになる。若者を中心にテレビ離れが進んでいると言われるなか、視聴者層の拡大を狙う。

民放がインターネットで共同で展開している見逃し配信サービス「TVer(ティーバー)」で、視聴率の高い午後7~11時の番組を中心に無料でリアルタイム配信する。パソコンやスマートフォン、タブレットに TVerのアプリをダウンロードすれば、地上波で放送している番組を見ることができるようになる。

既に放送が始まっている番組でも冒頭から見ることができる「追っかけ再生」機能も一部番組を除いて利用可能だ。テレビ東京はバラエティー番組「YOUは何しに日本へ?」や報道番組「WBS(ワールドビジネスサテライト)」などを配信する。

インターネット同時配信は、NHKが2020年から受信契約世帯向け配信サービス「NHKプラス」を始めている。民放では日本テレビが21年10月から「日テレ系リアルタイム配信」を先行して開始していた。民放キー5局が出そろい、NHKプラスに対抗する。

インターネットの普及でコンテンツの視聴スタイルが変化するなか、若い世代を中心にテレビ離れが進んでいるとされる。電通が推計した「日本の広告費」によると、インターネット広告費は19年にテレビメディアの広告費を上回り、21年は前年から21.4%伸びて2兆7052億円となった。他方、テレビメディアは1兆8393億円だった。民放キー局はリアルタイム配信では地上波向けとは別に広告費を得たい考えで、媒体価値を高める工夫をしつつ、広告主などと調整を進める。

米ネットフリックスや米アマゾン・ドット・コムの「プライム・ビデオ」など海外の動画配信サービスは豊富な制作費で独自コンテンツを拡充し、国内でも利用者数を伸ばしている。民放キー各局はリアルタイム配信を手掛けることで、普段テレビを見ない層にもテレビのコンテンツを届けられると期待をかけている。

一方、地上波の放送制度は地域ごとの免許制となっている。これに対し、インターネット配信では全国一律で同じ番組を見られるようになる。そのため地方のテレビ局には、在京キー局のリアルタイム配信が広がると自局の地上波の視聴率に影響するのではとの懸念もある。