ラグビー日本代表が28-21と快勝した13日のW杯1次リーグ、スコットランド戦。コーチ陣と選手、それぞれの準備がかみ合っての勝利だった。
最初のトライは計画通りに奪った。右のラインアウトから左端へボールを運んだ後、中央付近に戻してラックをつくる。続いてスペースの小さい左を攻めた。「狭いサイドを狙う計画があった」とある選手。このフィニッシュの場面、通常は右に張るWTB松島(サントリー)を左に移し、左WTB福岡(パナソニック)の内に置いている。
スコットランド戦で防御網を破る松島。
快足を並べてサイドを破ったトライは
周到な計画通りに奪ったものだった
福岡が快足で体半分、裏に出て松島につなぐと、相手はついて来られなかった。チーム1、2の快足を並べて防御網を破る策。「(攻撃コーチの)ブラウンから言われていた」と松島は言う。
スクラムは早くからの対策が実った。長谷川コーチが8月に話した。「スコットランドは右プロップのネルがスクラムを崩して反則を取りに来る。でも今はもう大丈夫」。3年前の同カード。ネルのスクラムを崩すプレーに、今回と同じオキーフ主審が日本の反則を連続して取っていた。
日本は相手の体を支えてスクラムを崩させない練習、崩れても日本の責任と見せない準備を進めてきた。今回はネルに一度も反則を誘われず、逆に2度の反則を奪った。
ジョセフHCの采配も当たった。後半、日本は逆風にさらされた。「前半も後半も風下」とSO田村(キヤノン)。風向きの変化で陣取り合戦は劣勢に。判定も「途中で基準が変わった」と某選手。後半は日本の反則5度に対し相手は1度だった。後半10分、14点差に縮められるとHCは従来より約10分早くSH田中(キヤノン)を投入。ベテランの正確な判断は苦戦を最小限にとどめた。
選手の主体性が実ったのは前半の勝ち越しトライ。タックルされながらのオフロードパス3連発で崩した。落球のリスクもある技術の使い所は「選手でルールをつくっていた」とリーチ主将(東芝)。味方が接点で優位に立って球を制御、かつ前が空いた時は、後方の選手がパスをもらいに行っていいという内容だ。
2、3本目のオフロードを受けたのは、本来は次に備えて後ろで待機する選手たち。正確に状況を把握し、かつ隊形を崩す勇気を持てていたからこそのトライだった。
(谷口誠)