安倍首相、辞任を正式表明

 持病再発「政治判断誤れず」

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安倍晋三首相(自民党総裁)は28日夕、首相官邸で記者会見し、辞任する意向を表明した。持病の潰瘍性大腸炎が8月上旬に再発し「病気と治療を抱えて体力が万全でない中、政治判断を誤ることがあってはならない」と説明した。新総裁が決まり次第、内閣総辞職する。自民党総裁選は9月中に実施される。

首相は自身の体調に関し「7月中ごろから体調に異変が生じ、体力をかなり消耗する状況となった」と話した。8月上旬に潰瘍性大腸炎の再発が確認され、投薬を始めたと明らかにしたうえで「継続的な処方が必要で予断は許さない」と語った。

首相は8月17、24両日に都内の病院を訪れ、24日の診断を受けて辞任の意向を固めたと述べた。「新型コロナウイルスの感染が減少傾向に転じ、実施すべき対応策をまとめたことから、新体制に移行するならこのタイミングしかないと判断した」との認識を示した。

首相は第1次政権で、2007年に持病の悪化を理由に突如退陣した。「政権の投げ出し」などの批判を受けた。今回も任期途中での辞任に関し「他の様々な政策が途上にある中、職を辞すことに国民に心よりおわび申し上げる」と陳謝した。

「国民の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断した」とも表明した。

北朝鮮による日本人拉致問題やロシアとの平和条約締結、憲法改正などの政治課題を挙げ「志半ばで職を去るのは断腸の思いだ」と訴えた。

自民党は次期総裁選びの手続きに着手した。28日の緊急役員会合で党総裁選の時期、形式について二階俊博幹事長に一任した。9月1日の党総務会で正式に決める。

新型コロナの対応が欠かせないため、党大会に代わる両院議員総会で後任を選ぶ方式を視野に入れて調整する。衆参両院の国会議員と都道府県連代表による投票となる。

選出後に衆参両院で首相指名選挙を実施し、新内閣を発足させる。新総裁の任期は安倍首相の残りを引き継ぐため21年9月末までとなる。

石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長の出馬が有力視される。菅義偉官房長官を推す動きがでる可能性がある。河野太郎防衛相も取り沙汰される。

石破氏は28日、総裁選出馬について国会内で記者団に「そう遅くない時期に判断したい。逃げることはあってはならない」と意欲を示した。岸田氏も都内で「次を担うべくしっかり努力をしていく気持ちは変わっていない」と強調した。

首相は記者会見で、石破、岸田、菅各氏らについて「それぞれ有望な方々だ」とした。総裁選には「影響力を行使しようとは全く考えていない。そうすべきではない」との考えを示した。

首相は12年12月に旧民主党から政権を取り戻して第2次政権を発足させた。官邸主導の体制を確立し第1次政権を含めた通算在任日数は桂太郎氏を超えて最長を記録した。連続在任日数でも24日に2799日に達し、佐藤栄作氏を抜いて歴代トップとなった。

日本の首相が健康問題で退陣するのは在任中に死去した大平正芳氏を含めて戦後6例目となる。

第2次政権発足直後、首相は金融、財政、成長戦略のアベノミクス「3本の矢」を打ち出した。旧民主党政権での円高・株安は是正された。集団的自衛権の限定行使を可能にする安全保障関連法を成立させるなど安全保障政策に注力した。外交ではトランプ米大統領と蜜月関係を築いた。