40年人口、市区町村3割上振れ
 千葉・流山は育児支援結実

日本の総人口の1億人割れが現実味を帯びるなか、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2023年に公表した地域別の将来人口推計では、3割の市区町村が10年前の推計値を上回った。出産・育児支援や企業誘致などで実績をあげる自治体が予想を覆す健闘を見せる。一方、東北地方などでは人口減が推計を超えて加速するケースも目立ち、自治体間のせめぎ合いが激しさを増す。


データで読む地域再生

社人研は国勢調査による人口を基に出生や死亡などの変動要因を加えた将来推計人口を5年ごとに算出している。23年公表の40年時点の日本全体の推計人口は1億1280万人と20年実績に比べて11%減るが、外国人の増加などもあって10年前の推計値より5%増えた。

一方、地域別の40年時点の推計人口を10年前と比べると、663市区町村、30都道府県が上振れした。人口流入が続く東京都が17.9%増えるなど首都圏の自治体の推計値超えが目立つ。

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上振れ幅が2位の千葉県(11.2%増)は6割の市町村が上回った。中でも流山市は40年人口が約23万6000人と9万人(62.9%)増える。05年のつくばエクスプレス開業で住宅や商業施設の開発が進んだことが大きい。

市も「母になるなら、流山市。」というキャッチコピーを掲げるなど、首都圏に住む若い子育て世帯の転入を促してきた。子どもの成長に伴う住み替えの希望などに応える相談窓口を開設。駅を利用する共働き世帯などの負担を減らそうと、「駅前送迎保育ステーション」を設けて保育園までバスで送り迎えする。

全国的に低下傾向の合計特殊出生率も22年に1.50と全国平均の1.26を上回る。人口は20年に20万人を超えた。米国で都市計画の仕事をしていた井崎義治市長は、まちづくりのポイントを「緑ある快適な住環境や教育体制」と強調する。今年は小学校を2校新設するなど、人口増を見据えた基盤整備も進める。

駅前で子供を預かり保育園などに送迎してくれる(23年、千葉県流山市)

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仙台市近郊の大衡村も50.3%増える。トヨタ自動車グループが10年ごろから生産投資を拡大。村は増えた税収を生かして子育て支援を拡充してきた。18歳までの医療費のほか、入園費や通園費、給食費や保育料も無料とした。子育て世帯の受け皿となる住宅団地も造成。23年の15歳未満人口は10年比で約6%増えた。今後は台湾の半導体大手も進出予定だ。

日本一人口が少ない町である山梨県早川町は41.4%増える。人口減対策として、12年度から給食費や教材費を含めて義務教育費を完全に無料とした。23年には16歳になる年度初めから36カ月間、月5000円を給付する。

島根県も県内の7割以上の自治体が上振れした。隠岐諸島の知夫村、海士町、西ノ島町が島外から生徒を招く「島留学」が押し上げる。人口減で危ぶまれた高校の存続に向けて「島まるごと学校」として08年に開始。現在は入学希望者が定員の2倍に達する。

島根県海士町などが取り組む就業型のお試し移住に、多くの若者が訪れる(23年4月)

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20年からは就労型お試し移住制度として1年間の「大人の島留学」と3カ月間の「島体験」も始めた。23年は150人が訪れる。「島に残ることを前提としていない」(海士町の担当者)というが、2割の人が島に残るという。

社人研の推計では、70年の日本の人口は現在の7割の8700万人にまで減る。京都大学の広井良典教授は「若い世代の地方への関心は以前よりも高い。自治体が教育や雇用などを切磋琢磨(せっさたくま)しながら充実させて地域に人が分散すれば、多様なアイデアが生まれて社会全体の活力も高まる」と話す。

(瀬口蔵弘、勝莉菜乃、グラフィックス 荒川恵美子)


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