牛肉、国産と輸入品の卸値逆転も 米国産高騰が影響

国産牛肉に「安心感」を抱く消費者は多いという

国産牛肉価格の米国産牛肉対比での割安感が強まっている。米国産が円安や現地の生産減を背景に高騰し、一部の国産品と指標となる卸値が逆転。スーパー店頭では国産と輸入品が同水準の価格で並ぶようになっている。国産に安心感を持つ消費者も多いといい、スーパーでは売り場を拡張する動きもある。

複数の食肉卸会社によると、輸入品と競合しやすい国産乳用牛のバラ肉の卸間での取引価格は現在1キロ1250円前後だ。2023年後半に消費が後退し相場は軟調となったが、高騰した輸入品からの需要シフトで24年に入り上昇に転じた。

一方、輸入品の代表格となる米国産のバラ肉(ショートプレート)の国内卸値は、現在1キロ1450〜1530円と前年同期比で8割高だ。米国では牛が自然増減を繰り返す生産サイクルの減少局面にあり、当面は牛肉供給が減少する見通しだ。需給逼迫に円安も重なり、日本国内の価格上昇傾向が続く。

スーパー店頭で米国産とともに並ぶことが多いオーストラリア(豪州)産も値上がり基調だ。米国が自国での生産減をまかなうために豪州産の手当てを進めており、国際相場が押し上げられている。

牛の種類や取引条件で違いはあるものの、24年に入り米国産の指標価格は国産乳用牛より高くなっている。スーパー店頭で「国産」のプレミアム感は薄れ、輸入品のほうが高いケースも目立つ。1年前は国産の方が1キロ当たりでは350円ほど高かった。

6月初旬、埼玉県川口市にあるスーパーでは国産牛肉の売り場の幅が3月と比べ70センチメートルほど広がっていた。国産のなかでも安価な「交雑牛」や「乳用牛」の肉の扱いが増えた。

この店では国産の方が3〜5%高い価格設定だ。国産交雑牛の切り落としを購入した50歳代の主婦は「牛肉はどれも高い。この程度の価格差なら国産を買いたい」と話した。

豚肉にも引き合い

牛肉の代替として引き合いを高めている豚肉価格も足元で上昇している。東京都中央卸売市場では5月末の国産豚肉(上物)の卸値が1キロ836円と前月比で20%高となった。

円安や調達先となる欧州での生産コスト増大などで輸入が難しくなる中、栃木県や岩手県の養豚場で5月下旬に相次いで家畜伝染病の豚熱(CSF)が発生した。供給不安が急速に強まり、価格上昇につながった。今後、スーパー店頭の価格にも波及するおそれがある。


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