出生率、東京「0.99ショック」 時間や住まいの余裕乏しく

東京都の出生率は全都道府県で唯一、1を割り込んだ

厚生労働省が5日発表した2023年の合計特殊出生率は1999年以来、24年ぶりに全都道府県で前年を下回った。なかでも深刻なのは東京都の0.99で、全国でただひとつ1を割り込んだ。未婚や晩婚の影響に加え、子育ての時間や住まいの余裕が乏しいことが背景にある。

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東京都の小池百合子知事は5日、都庁で記者団に「なかなか厳しい。将来への不安、仕事の正規・非正規、また実質賃金が上がっていないなど、総合的に考えないといけない」と語った。

東京の出生率は2003年にも1を下回っていた。厚労省は当時「一時的な現象」と説明していた。出生率と出生数はその後に改善したものの、近年はともに右肩下がりの状況にある。

その要因として未婚率の高さがあげられる。国立社会保障・人口問題研究所によると、東京の50歳時点の未婚率は男性が32.15%、女性が23.79%(いずれも20年)でともに全国で最も高い。出生率の分母は15〜49歳の女性となっており、独身の女性が多い地域で出生率は低く出る傾向にある。

都が21年に実施した未婚者調査で、独身のメリットについて「行動や生き方が自由」との回答が78%で最も多かった。以下は「家族を養う責任がなく気楽」「金銭的に裕福」が続いた。東京は女性の平均初婚年齢も30.7歳と全国で最も高い。

結婚しても、子育てにあてる時間は少なくなりがちだ。18年の住宅・土地統計調査によると、通勤に45分以上かけている人の割合は東京都で47%に上った。神奈川・千葉・埼玉3県に次いで全国で4番目に高かった。22年の毎月勤労統計調査では、東京の平均残業時間は月11.7時間で愛知と並んで最も長く、仕事に縛られている。

教育費の高さも、子どもを多く持ちにくい要因として指摘される。23年の家計調査(2人以上世帯)で東京23区は月2.4万円と全国平均の2倍を超えた。私立学校の授業料や塾などの費用がかさむ。

これらの点に加えて、近年の住宅価格の高騰や住まいの狭さも問題点としてあげられる。結婚して子どもができても、都外に引っ越すケースは目立つ。

東京都豊島区によると、22年に区外へ転居した子育て世帯のうち、63%は最年長の子が0〜6歳の時に転出していた。子どもが大きくなると、比較的安価で広い家に住める都外に出ていく人が多いとみる。

豊島区は住戸面積が50平方メートル以上の共同住宅の割合が33%と、23区で3番目に低い。区には「ファミリー物件が少ない」といった声が寄せられている。区は10月から一定規模以上の物件を対象に、マンション事業者などに家族で住める広さの確保を義務づける。同様の動きは23区内で広がる。

不動産経済研究所(東京・新宿)の調査で、23区の新築マンションの平均価格は23年に前年を39%上回る1億1483万円となり、1億円を初めて突破した。希望する住まいの確保には逆風が吹く。

地方の市町村レベルでは出生率の向上につなげた自治体もある。福井県は北陸地方で最も高く、おおい町は18〜22年の出生率が1.91に達した。子育て世帯向けの給付金を充実させ、23年度には大学生の子を持つ世帯への所得制限を撤廃した。支給額は月2万円で、4年制大学なら子ども1人あたり計96万円もらえる。


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