G7広島サミット、韓国やインドも参加 注目の議題は?

Nikkei Online, 2023年5月18日 22:30更新

主要7カ国(G7)は19〜21日に広島で首脳会議(サミット)を開く。
ロシアによるウクライナ侵攻が続き、中国の威圧的行動が取りざたされる厳しい安全保障環境で各国リーダーが原子爆弾がかつて投下された街に集う。
G7の枠組みや何を議論するのかなどポイントをまとめた。

    ・G7サミットとは?
    ・中ロへの抑止策を示せるか?
    ・なぜ広島で開催?

(1)G7サミットとは?

G7サミットは日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの 7カ国の首脳に 欧州連合(EU)の大統領、欧州委員長を加えた 計9人がメンバーだ。
日本の首相はアジアから唯一参加する。

7カ国であることから「Group of 7(グループ・オブ・セブン)」を略したG7と呼ぶ。
サミットは山の頂の意味もある言葉で首脳を指す。

7カ国が持ち回りで開き、開催国の首脳が議長として会議を取り仕切る。
2023年は日本の番で岸田文雄首相が議長を務める。
議長国はサミットに加え、前後に分野別の閣僚会合も設定する。
これらの議論の成果はサミットとも連動する。

サミットの議論の結果は成果文書にまとめるのが通例だ。

初のサミットは1975年11月、フランス・パリ郊外のランブイエ城で開いた。西側の主な先進国が第1次石油危機後の経済的混乱に協調して対処する目的があり、日本も協議に加わった。

ランブイエでの首脳会議に出席するため羽田空港を出発する
当時の三木首相(中央)ら(1975年11月)

元来は経済が軸だったものの、東西冷戦下で政治問題も扱うようになる。冷戦が終わるとロシアが政治討議に加わり、98年にはロシアを加えた8カ国で「G8」と呼ぶようになった。

ロシアが2014年3月にウクライナ南部クリミア半島の編入を宣言し、ほかの米欧諸国との亀裂が決定的になった。日米など7カ国はロシアの資格を停止し、参加国は再び7カ国に戻った。

21世紀に入ると中国やインドなど新興国の経済成長が注目された。08年には中国などが参加する20カ国・地域(G20)の首脳会議が始まった。

サミットの準備はヒマラヤ登山の道案内をする人たちに由来する「シェルパ」の名を持つ各首脳の補佐役が担う。日本の場合、外務省の経済担当の外務審議官が務める。


(2)中ロへの抑止策を示せるか?

G7広島サミットは3日間の日程を予定する。テーマ別の討議のほか、夕食会などでも意見を交わす。期間中にはG7の枠組み外の国も交えた拡大会合も設ける。

主要議題の一つはウクライナ情勢への対応だ。ロシアが22年2月に侵攻し始めて1年以上がたち、各国の「支援疲れ」を指摘する声もある。

ウクライナは近く反転攻勢にでる構えをみせる。ゼレンスキー大統領はG7サミットのウクライナ関連の討議にオンラインなどで出席し、支援の継続を呼びかける見通しだ。

G7は4月に長野県軽井沢町で開いた外相会合で出した共同声明で、ロシア軍の「即時かつ無条件の撤退」を求めた。中国などを念頭に経済制裁をすり抜けて武器がロシアに流れ込む事態を懸念し、対策を取る方針をすりあわせた。

ロシアへの制裁強化も明記した。サミットで具体策を打ち出せるかは注目点となる。

軍備拡張を進め、東・南シナ海などで軍事的威嚇を続ける中国への対応策も話し合う。
G7はサミットで「台湾海峡の平和と安定の重要性」を改めて確認する見通しだ。

4月にフランスのマクロン大統領が台湾情勢を巡って米国と中国のどちらにも「追随」すべきでないと発言し、波紋を広げた。G7首脳で足並みをそろえて中国に現状変更の試みに反対するメッセージを伝えられるかもポイントとなる。

中ロはアフリカや中東、中南米などの新興・途上国に接近し、日米欧と対峙する構えをみせる。
サミットでは「グローバルサウス」と呼ぶこれらの国々への食料やエネルギー支援も討議する。

岸田首相(右)は5月7〜8日に韓国を訪問し、サミットに招く尹錫悦大統領と会談した
(7日、ソウルの大統領府)=共同

拡大会合には韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領やインドのモディ首相、オーストラリアのアルバニージー首相ら8カ国首脳を招いた。インド太平洋の「同志国」や中南米やアフリカの地域を代表する国など対中ロでの連携を意識した。


(3)なぜ広島で開催?

広島での開催は地元選出の衆院議員である首相の思いが背景にある。
被爆地・広島は首相がライフワークと位置付ける「核兵器のない世界」へのメッセージを発信する舞台になる。

首相は期間中に各国の首脳らと広島平和記念資料館を訪れる。
日本政府には「とくに核兵器を保有する米英仏の首脳には必ず足を運んでもらいたい」との狙いがある。

広島県は岸田首相を含め歴代4人の首相を輩出した土地でもある。
岸田首相が率いる派閥「宏池会」を立ち上げた池田勇人氏、その秘書官から政界入りした宮沢喜一氏の2人は首相の派閥の先輩でもある。

広島はかつて日清戦争の際に大本営を置くなど「軍都」でもあった。いまでも周辺に自衛隊の拠点がある。

瀬戸内海に面し、県内には原爆ドーム(広島市)と厳島神社(廿日市市)という世界遺産がある。サミットの行事は厳島(通称・宮島)でも開く見込みだ。

サミットは「グランドプリンスホテル広島」が主な会場になる。JR広島駅の南方で港がある宇品地区の「宇品島」(広島市南区)にある。市街地側と島を結ぶのは道路橋1本で警備がしやすいという利点が決め手になった。

サミットの主会場になるグランドプリンスホテル広島(広島市南区)

サミット開催に合わせて島への出入りは厳しくなる。住民などを対象に車両通行証が発行される計画だ。安倍晋三元首相の銃撃事件なども踏まえ、厳戒態勢を敷く。大型連休ごろから各都道府県警に動員がかかっているという。

(羽田野主)


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