連続する災害、対応難しく 政府や企業

北海道地震(2018/9/06)

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  • Nikkei Online: 2018/9/7 0:35
  •  北海道で震度7を観測した地震を受け、政府や企業は初動対応に全力を注いだ。ただ西日本豪雨や台風21号への対応に追われた直後の大地震で、現場には疲弊感も見える。短い期間に連続して起きる複合災害に、限られた人員で立ち向かう課題が浮かぶ。自然災害や安全保障でさらに想定外の事態が起きるリスクはあり、危機管理への対応力が問われる。

    北海道地震で道路が陥没した住宅地(6日午後、札幌市清田区里塚)

    ■ 政府、疲弊感募る現場

     北海道地震への初動対応で慌ただしかった6日朝。政府は関係閣僚を集めた会議を2つ開いた。

     一つは北海道地震に関する閣僚会議。午前7時37分から開き、安倍晋三首相は「被災者の救命、救助、住民の避難、ライフラインの復旧に全力であたってほしい」と関係閣僚に指示した。

     もう一つは午前8時38分から開いた西日本豪雨の復旧を巡る非常災害対策本部会議。首相は台風21号により閉鎖した関西国際空港(大阪府)について「まず国内線を明日中に再開し、国際線についても準備が整い次第再開する」と表明した。

     地震も豪雨も台風も、首相が早期の救助・復旧へ陣頭指揮を執り、指示を出す。7月の西日本豪雨を受け首相は予定していた欧州・中東訪問を取りやめ、外交にも影響する。防災を担う内閣府職員は被災状況の把握や官邸への情報報告にあたり「今週は毎日2、3時間睡眠だ。疲れがたまっている」と漏らす。

     事態の把握で難しさもある。世耕弘成経済産業相は6日朝、北海道全域で発生した停電について記者団に「数時間以内で復旧のメドをつけるよう指示を出した」と語った。だが、苫東厚真発電所に設備の損壊が見つかったことが判明。昼には「北海道全域が完全に復旧するまでには少なくとも1週間以上かかる見通しだ」と修正した。

     自衛隊は災害派遣が続く。北海道地震で人命救助や給水などに従事する自衛隊は6日午後に約4900人で、7日に2万4千人、9日に2万5千人まで増やす。

     自衛隊は今年に入り2月の北陸地方の記録的な大雪、4月の大分県の山崩れ、6月の大阪北部地震と相次ぎ災害派遣にあたった。7月の西日本豪雨では最大3万3千人の態勢を組み、8月18日に派遣を終えたばかりだ。自衛隊幹部は「西日本に行って今度は北海道に派遣された隊員もいる。現場の疲労はたまっている」と語る。

     地震や台風が起きやすい日本は常に災害リスクに直面する。政府は1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災を受けて対応力を強めたが、想定を超える緊急事態は起きうる。

    ■ 企業、BCP再見直し

     日本の製造業は東日本大震災や熊本地震で幾度もサプライチェーンを分断される危機に際し、事業継続計画(BCP)を繰り返し見直して災害に備えてきた。今夏の2度の台風では大きな被害を回避するのにBCPが一定の役割を担ったようだ。ただ複数の災害が同時に起きるような事態への備えは十分といえない。

     マツダ三菱自動車は7月の西日本豪雨を受けBCPを見直す方針だ。マツダは購買本部と部品各社が連携するよう定めたBCPが生き、豪雨当日に休業を決めるなど「迅速な情報収集が生きた」(吉原誠常務執行役員)という。三菱自も水島製作所(岡山県倉敷市)の代替調達網により早期に生産を再開できた。

     ただマツダは災害時に社員を通勤させると地域の交通渋滞を引き起こす可能性があると外部から指摘された。あらゆる可能性を想定してBCPの見直しに着手する。三菱自も取引先の復旧策を新たに盛り込む方針だ。精密加工装置を手掛けるディスコも西日本豪雨で、呉工場(広島県呉市)周辺が被害を受けた。地震中心の対策では十分でないと判断し、新たなBCPの検討に入った。

     シャープは4日に襲った台風21号により、堺市の本社で従業員などの自動車十数台が横転したり、窓が割れたりする被害を受けた。「次回の教訓にすべき」(広報)という。パナソニックは今夏に社員の安否確認システムの仕組みを見直し、北海道での地震では、これまでより確認を早められたという。

     日本企業のBCPは地震による被害を想定したものが中心だが、多種の災害が同時に起きる可能性は捨てきれない。メーカーからは「あらゆるケースを想定したBCPなど考えていない」との声が聞かれ、今後に課題を多く残している。