半導体装置ASML、北海道に新拠点 ラピダス工場に協力

<<Return to Main

Nikkei Online, 2023年9月26日 18:00

ASMLの露光装置と技術支援がなければ最先端半導体の量産は難しい

半導体製造装置大手、オランダのASMLが2024年後半をメドに北海道に技術支援拠点を新設する。最先端半導体の量産を目指すラピダスの工場設立や保守点検に協力し、28年ごろまでに国内人員を4割増やす。米中対立で東アジアの地政学リスクが高まる中、海外大手が日本で相次ぎ拠点開設に動いている。

ASMLは半導体製造の主要工程を担う露光装置で世界首位。極端紫外線(EUV)の露光装置を世界で唯一手がける。EUVは回路線幅5〜7ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下の最先端半導体の量産に必要で、ASMLの支援が不可欠となる。

24年後半をメドに北海道千歳市周辺に技術支援拠点を開く。約50人の技術者がラピダスが建設中の半導体工場内の試作ラインにEUV露光装置を設置し、工場立ち上げや保守点検に協力する。

ラピダスの生産が始まれば、EUVを導入した量産ラインが稼働する国・地域は米国や台湾、韓国、アイルランドに次ぎ日本が5カ所目とみられる。

熊本県でも台湾積体電路製造(TSMC)工場完成が近づき、ASMLは9月に技術支援拠点を移転・拡張した。技術者らを40人と約4倍に増やす。23年からの5年間で国内全体の人員を4割増やす目標を掲げており、現在の約400人から28年ごろには560人前後の規模になるとみられる。

ASMLは露光装置の主な工場と研究開発施設をオランダに持つ。これまで大手顧客が工場を持つ台湾や米国を中心に手厚い技術支援体制を敷いてきた。

世界の半導体生産の2割を占める台湾では、台湾有事の懸念など地政学リスクが高まっている。有事の際には台湾以外の技術支援拠点から技術者を各地に派遣できるようにし、世界の拠点間で柔軟にサポートし合う体制構築が課題だった。

ASML日本法人の藤原祥二郎社長は「地政学的な状況を背景に日本の半導体産業は成長が続く」とみる。日本には関連素材メーカーも集積する。東アジアの半導体供給網において重要性が増している。

米国の半導体装置大手も日本で拠点を拡充する動きが相次ぐ。世界首位の米アプライドマテリアルズは日本で今後数年間に人員を6割増やす。世界3位の米ラムリサーチは8月に熊本県の技術支援拠点を別の場所に移して面積を広げたほか、北海道にも新たな施設の設置を検討する。

一方、国内の半導体製造装置メーカーは海外に拠点を分散している。東京エレクトロンは24年の稼働を目指して韓国に技術開発施設を増設中で、日立ハイテクも米国や韓国、台湾で開発拠点の新設や拡張を進めている。

米国や欧州、韓国、中国、インドなど各国政府が自国で安定して半導体を調達するため、半導体産業の強化を急いでいる。拠点を多様化させて有望顧客に幅広く対応するネットワーク作りも、半導体装置メーカーにとって課題となる。

(松浦奈美、近藤康介)


<<Return to PageTop