内向く自民党総裁選、物価高対策に集中 
世界の視点欠く

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Nikkei Online, 2025年9月24日 23:09更新

自民党総裁選の討論会で発言する(左上から時計回りに)小林、茂木、林、高市、小泉の各氏
(24日、東京都千代田区)

自民党総裁選の5候補は24日、日本記者クラブで公開討論会に臨んだ。足元の物価高対策や野党との協力を巡る主張に集中した。トランプ米大統領が日本を含む同盟国との関係や国際秩序を揺るがす。論戦は安全保障や自由貿易体制を守る「世界」の視点に欠けた。

討論会には小林鷹之元経済安全保障相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗前経済安保相、小泉進次郎農相が参加した。

各候補とも家計支援が目立った。小泉、高市両氏は所得税の基礎控除の引き上げ、小林氏は定率減税を訴えた。茂木氏は自治体を通じた物価高対策として交付金を掲げた。林氏は実質賃金を年1%増やすことを提起した。高市氏は中低所得者の負担を軽くする「給付付き税額控除」に意欲を示した。

消費税減税、小泉・高市氏らが慎重

家計支援に関する発言は野党との協力をにらむ。自民、公明両党は衆参両院で過半数を持たない。野党の協力が欠かせない。所得税の基礎控除の引き上げは国民民主党、給付付き税額控除は立憲民主党が主張する。

小泉、高市、茂木3氏は消費税の減税に慎重な立場を示す。同時に野党との協議を否定しなかった。

林氏は中低所得者の支援策「日本版ユニバーサルクレジット」を提起した。高市氏は財政運営について金融資産を除いた純債務残高を基本とする立場を示した。こうした財政や社会保障に関わる論点は詰め切れなかった。

各候補とも中東和平や地球環境問題に背を向ける米国に外交・安保を依存するリスクへの言及は少なかった。トランプ氏が否定する戦後の国際秩序をどう守るかの構想も提起が乏しく、内向きな姿勢が目立った。

小泉氏は「日米関係は日本外交の基軸であることに変わりはない」と述べた。「国際情勢が厳しい状況で強く安定した政権基盤が必要だ」と話し、まず国内を固める重要性を説いた。

高市氏は「日本が世界の真ん中で咲き誇る外交はいまからでもできる」と語った。

成長戦略、焼き直し目立つ

外交力の土台になる経済力をどう高めるか踏み込み不足だった。成長戦略は従来の政策の焼き直しが目立つ。高市氏は日本の技術を製品・サービスとして世界市場に展開する方針を強調した。林氏はコンテンツ産業を柱に据える考えを示した。

防衛力の強化も具体論が乏しかった。小林氏は防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に高める政府目標に関して「到底足りない」と指摘した。引き上げ幅や財源は明示せず「これから速やかに分析するなかで積み上げていくべきだ」と話した。

自由貿易体制をどう守るかに関しても論戦を交わした。小林氏は包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)などを欧州や東南アジアに広げると主張した。林氏も同調した。すでに石破茂首相が提起しており、実現に向けた具体策を示す必要がある。

野党が首相指名選挙で統一候補を立てる可能性は低い。次の自民党総裁が石破首相の後継に就く見方が多い。

退陣を表明した石破首相が国連総会に出席し、日本の国際社会での発言力が低下したとの解説がある。各候補とも目先の野党の協力を訴えるあまり、世界を見渡した中長期的なビジョンを提示できなかった。

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