高市内閣、ライバル取り込み「挙党体制」を演出
 女性は2人どまり

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Nikkei Online, 2025年10月22日 2:00

初閣議を終え、記念写真に納まる高市首相と新閣僚ら(21日夜、首相官邸)

高市早苗首相は21日の組閣で、「全世代総力結集」の方針のもと総裁選で戦ったライバルを閣内に取り込むなど挙党体制を意識した。自身の総裁選陣営から 5人を登用し論功行賞の色合いも濃い。女性閣僚は 2人にとどまり、首相を含めて3人だった。

最も重視したのは総裁選で争ったライバルの処遇だ。小泉進次郎氏を防衛相、林芳正氏を総務相、茂木敏充氏を外相にそれぞれ起用した。小林鷹之氏も党役員人事で政調会長に充てた。

党派閥の解消後、挙党一致をわかりやすく演出できるのが、総裁選での各陣営の幹部を登用することだ。

小林氏に近い松本洋平氏を文部科学相に、林氏に近い金子恭之氏を国土交通相に指名した。石破茂前首相に近い赤沢亮正氏は経済財政・再生相から経済産業相に横滑りさせた。

組閣に先立って決めた党役員人事で、麻生太郎副総裁率いる麻生派や茂木氏側近が目立つと党内で反発が出ていた。麻生氏も茂木氏も総裁選の決選投票で首相を支持したためだ。

自身の側近を重要閣僚に起用するなど「高市カラー」も垣間見える。

首相肝煎りの「責任ある積極財政」を推進するために経済・財政政策の担当閣僚に城内実氏を置いた。

城内氏は積極財政派として首相と政治信条が近く、自民党で食料品を対象とした消費減税を訴える議連の後見人を務める。城内氏には新設した「日本成長戦略」の担務を加えた。

同じく積極財政派の片山さつき氏を財務相に就けた。首相主導で経済財政運営に取り組む狙いが透ける。補助金制度の見直しも担当する。

首相は総裁選でも中国製の太陽光パネルが国内市場を席巻している背景に補助金の問題があると指摘するなど、重要課題に位置付ける。

総裁選の陣営を「キャプテン」として支えた小野田紀美氏は経済安全保障相に充てる。重視する外国人政策の司令塔役も命じた。

今回は多様なキャリアや世代からの人材登用を意識し、初入閣が半数を超える10人に達した。衆院当選2回で「若手」にあたる松本尚氏をデジタル相に抜てきし、43歳の鈴木憲和氏が農相に就いた。

党内には過去最多の6人の女性登用に期待する声があったものの、片山財務相、小野田経済安保相の2人にとどまった。当初の想定より進まなかった。

首相は総裁選で「北欧の国々に比べ劣らない女性がたくさんいる内閣や党役員会」をめざすと訴えていた。21日の記者会見で「あくまでもチャンスの平等を大事にしている」と語った。副大臣・政務官人事でのさらなる女性登用を示唆した。

閣僚人事の情報が事前に漏れないよう徹底した手法も「高市流」だった。

首相は木原稔氏を官房長官に起用するところから一連の人事を始めた。木原氏は2021年総裁選や政調会長時代の首相を事務局長として支えた腹心だ。22年春ごろ周囲に自分が首相になったら木原氏を「官房長官にする」と語っていた。3年間温めた人事だ。

木原氏と組閣人事について水面下で協議を重ね、情報保全を徹底した。総裁選で戦ったライバルの処遇を先行して固めた以外はギリギリまで調整を続けた。

一部を除いて閣僚本人にも直前まで担当を伏せた。「入閣してもらいたいので準備をしてほしい」。首相は20日昼、自ら電話をかけて閣僚候補に役職を提示しないまま内示した。食い下がったある閣僚には「ポストは教えられない」と答えた。

日本維新の会と連立を組んだものの少数与党の状況は変わらない。首相指名選挙前に人事報道が出て紛糾するのを警戒していたためだった。

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