基金乱立3.7兆円、膨らむ補正予算 監視の目働きにくく

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Nikkei Online, 2021年12月21日 5:52更新

総額35.9兆円と過去最大の2021年度補正予算が20日、成立した。基金の新設や積み増しに使う支出が少なくとも3.7兆円と全体の1割を占める。政府は12月からの21年度の4カ月と22年度予算案をあわせて「16カ月予算」とし、新型コロナウイルス禍に対応する。監視の目が働きにくい基金が歳出増の隠れみのになれば「賢い支出」が遠のく懸念がある。

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21年度補正の規模が膨らんだのは、各省庁が当初予算で要望した事業を補正に計上する「補正回し」が常態化している背景がある。社会保障費など恒常的に必要な経費を積み上げる当初予算は翌年度以降の目安となりやすい。このため財務省は当初予算の歳出を抑え、補正予算は査定が比較的甘くなる傾向がある。

政府は21年度補正と、調整が大詰めを迎える22年度予算案を16カ月予算として一体で編成。22年度予算案は高齢化による社会保障費の自然増や安全保障環境の変化に対応した防衛費の増加などで、一般会計の歳出総額が107兆円台と過去最大となる見通しだ。

当初予算案は構造的に削れない予算も多く、成長戦略につながる歳出の余地は限られる。デジタル化や先端技術の開発といった規模の大きい事業費は21年度補正に回っている実態がある。

成長につながるか不透明な項目や、本来は当初予算案で措置すべきインフラ整備などが補正に計上されるケースもあり「16カ月予算」により財政規律が緩む懸念がある。

補正には半導体の生産拠点を確保するために基金を通じて執行する6170億円や、中小事業者の業態転換を促す「事業再構築促進基金」の6123億円を計上した。

参院予算委員会調査室によると、21年度補正ではこうした基金向けの支出が一般会計で3兆7605億円、特別会計で1530億円の計3兆9135億円に上った。

予算の明細書に基金向けと明記されるようになった14年度の補正予算以降では、脱炭素技術の研究開発支援向け2兆円基金で計5兆円弱に膨らんだ20年度第3次補正予算に次ぐ規模となる。基金は予算の単年度主義に縛られず長期にわたり機動的に財政出動できる半面、額ありきで需要が過大に見積もられやすい。

08年のリーマン危機や11年の東日本大震災の際にも経済対策として基金が活用されたが、低い執行率に終わったものは少なくない。中小企業支援や失業者対策などで投入した国費の中には執行率2割未満の基金もある。

いったん基金に国費が投入されると国会の監視が働きにくく、非効率な運用を放置する事態も招きやすい。中小企業庁が中小の再建計画づくりを後押しするため12年度に設置した基金は支出の4割を管理費が占める。利用が想定を大幅に下回っているのに、全国に設置する申請窓口の人件費を見直していないためだ。

政府は定期的に必要額を精査し、余剰資金は国庫返納するよう求めているが、徹底されているとはいえない。省庁側の担当者も人事異動で頻繁に代わるため責任感が薄れがちで、抜本的な見直しに着手しにくい。

21年度補正では革新的な技術開発を支援する「ムーンショット型研究開発」に計800億円を計上した。経済産業省が40億円出すほか、文部科学省や内閣府などが他の名称で分担して支出する。

関係者によると財務省は当初100億円台まで圧縮する方向で査定していた。ただ量子技術を推進する与党議員が1000億円程度への拡充を要望。予算案の決定直前まで折衝が続き800億円で収まった経緯がある。

適切な情報公開がされているかも課題となる。鈴木俊一財務相は17日の参院予算委で21年度補正の基金向け支出について「合計で5.2兆円計上している」と答弁した。

既存の32基金に約4兆円を積み増し、新設6基金に約1.1兆円を充てるという。コロナ対応の地方創生臨時交付金などを合算しているとみられる。これらは明細に基金向けと明示されていない。特会を含めた積み上げベースの3.9兆円とは乖離(かいり)する。

岸田文雄首相は科学技術の振興や経済安全保障の担保に向けて「財政の単年度主義の弊害の是正」を掲げる。使途や要求額の精査が伴わなければ、野放図な歳出を膨らませる恐れもある。経済成長に向けて継続的に必要な予算であれば、一過性の補正予算ではなく当初予算での対応も検討する必要がある。

 

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