中台結ぶ2035鉄道計画、習近平氏が仕掛ける心理戦


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Nikkei Online, 2021年3月4日



マクマスター元大統領補佐官(2018年1月)=ロイター

【ニューヨーク=アレックス・ファン】米上院軍事委員会は2日、アジア太平洋地域で最大の火種の一つとされる中国による台湾侵攻が起きた場合の米国側の備えを巡る懸念を表明した。出席したマクマスター元米大統領補佐官(国家安全保障担当)は「2022年以降が台湾にとって最大の危機を迎える時期になる」と警鐘を鳴らした。

マクマスター氏は、トランプ前政権で17年~18年に大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めた。現在は米スタンフォード大学フーバー研究所の上級研究員だ。同氏は委員会のヒアリングで中国にとって「台湾は次の大きな目的」であり、大規模な戦争につながりかねない「最も重要な引火点」であると述べた。

潜在的な軍事衝突の可能性を巡る質問に対し、北京冬季五輪や5年に1度の共産党大会が終わった後の22年以降が台湾にとって最大の危機を迎えると指摘した。

また中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席について、香港や新疆ウイグル自治区での取り締まりを引用しながら「彼は中国を再び完全なものにしたいと考えているだろう」と話した。 一方、中国は王毅(ワン・イー)国務委員兼外相が先週、米国はこれら地域における内政干渉をやめるべきだと繰り返している。

外交問題評議会が1月に発表した報告書「プリベンティブ・プライオリティ・サーベイ」で、台湾を巡る米中間の深刻な危機は初めて最高レベルの紛争に指定された。この報告書によると、米国の国益に対する危険度は北朝鮮の核開発問題に続く2番目の脅威となった。

中国が台湾を侵略した場合に米国が長年続けてきた戦略的曖昧の政策の代わりに、いわゆる戦略的明晰(めいせき)を容認し、台湾防衛を明確に誓約すべきかどうかを問われると、マクマスター氏は現在の政策は「適切だ」と述べた。「特に台湾に対する(武器売却に終了期限を設けないことや武器売却に関する中国との事前協議をしないことなどを定めた)『6項目保証』を公表した後がそうだ」と指摘した。

マクマスター氏はトランプ前政権とバイデン政権がともに台湾を保証し、中国に明確なメッセージを送るために行動してきたと語った。台湾が22年以降の「最大の危機」の期間を迎える前に「(台湾)自身を(中国が)消化できないようにするために(台湾が)防衛を強化する」ことを米国が支援することだと述べ、その行動が米中武力紛争のシナリオを防ぐためのカギになると語った。

公聴会では他にもさまざまな意見が出た。共和党のトム・コットン上院議員は、中国の台湾に対する動きが大国間の先端技術競争に影響を与える可能性を示唆した。 「中国が台湾を侵略して併合すれば、中国が半導体チップで世界をリードする生産国になるだろう」と述べた。米ボストン・コンサルティング・グループによると、台湾は世界最大の半導体生産国で、世界全体の生産量の22%を占める。

公聴会で発言したブルッキングス研究所に務める外交政策専門家のトーマス・ライト氏は、戦略的曖昧さの概念について「再考しない」と述べ、米国が台湾への関与、中国への抑止を示すのは行動を通じてであると付け加えた。