中国気球40カ国超で
 米国「通信傍受用のアンテナ搭載」


Nikkei Online, 2023年2月10日 6:36更新

5日、米南部サウスカロライナ州沖で、偵察気球の残骸を回収する米海軍の爆発物処理班=米海軍提供・共同

【ワシントン=坂口幸裕】米国務省は9日、中国がこれまで40カ国以上の領空に偵察気球を飛来させているとの分析を明らかにした。米軍が4日に米領空で撃墜した気球の解析を踏まえ、傍受する機器を備え「情報収集活動が可能だった」と結論づけた。関与した中国人民解放軍と取引のある団体への対抗措置を検討する。

国務省高官は9日、気球に通信傍受や位置情報の特定ができるアンテナと電力を生成する太陽光パネルが搭載されていたと指摘。「装備が偵察用なのは明らかだ」と述べ、「民間の気象研究用」とする中国の主張を否定した。偵察活動は中国人民解放軍の指示でなされるケースが多いとも語った。

米軍がアリューシャン列島付近の米領空に気球が侵入したのを最初に確認したのは1月28日だった。米アラスカ州を横断して同30日にカナダ領空を通過後、同31日に西部アイダホ州の上空で再び米領空に入った。

その後、飛行したモンタナ州には大陸間弾道ミサイル(ICBM)を運用するマルムストロム米空軍基地がある。4日に撃ち落とした偵察気球は南部サウスカロライナ州の沖合6マイル(約10キロメートル)ほどの米領海に落下した。残骸を回収し、中国の偵察能力と意図を分析する方針だ。

国務省高官は気球が米領空を飛行中も機密を保護したと強調。「中国による主権侵害を容認できないという明確なメッセージを中国に送った」と訴えた。気球の飛来を受けてブリンケン米国務長官は2月上旬に計画していた訪中を延期した。

気球を製造したのは人民解放軍の公認取引先だと明言した。「米領空への侵入を支えた中国共産党と関係がある団体への措置を検討する」とも語った。団体名は明かさなかったものの、ウェブサイトで公開している飛行映像が米領空を飛行した気球に酷似しているという。

米政府は中国の偵察気球に関する情報を同盟・有志国などに共有した。米メディアによると、中国は過去に偵察気球を使って日本やインド、ベトナム、フィリピン、台湾などの軍事関連の情報を集めていた。

国務省高官は9日、米国や同盟・有志国の安全保障に脅威をもたらす中国の大規模な偵察活動を公表し、対処する取り組みを強化すると説明した。

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