米首都厳戒、州兵1万人配置 トランプ氏弾劾採決へ


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Nikkei Online, 2021年1月13日 5:21更新


バイデン次期大統領の就任式に向けて
首都ワシントンは厳戒態勢に入る(7日、首都を警備する州兵)=AP

【ワシントン=中村亮】20日のバイデン次期米大統領就任式を1週間後に控え、首都ワシントンは特別警戒体制に入る。武装集団が全米50州の議会に抗議デモを計画しているとの情報もあり、州兵1万人を動員する。民主党は連邦議会議事堂の占拠事件でトランプ大統領の責任追及を急ぎ、罷免が実現しなければ大統領の弾劾に向けた訴追決議案を13日にも下院で採決する。

「武装が必要なら関係機関と協議したい」。ダニエル・ホカンソン州兵総局長は11日、記者団に語った。大統領就任式に向けた治安対策を巡り、州兵がライフル銃や拳銃を持つことを検討している。

ワシントンには約6千人の州兵を配備しているが、16日までに1万人に増やし、必要に応じて20日までにさらに最大5千人を増員する。6日の議会占拠で州兵動員が不十分だったとの指摘があり、就任式に向けて体制を強化する。

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国土安全保障省は11日、ワシントンでの特別警戒体制を13日に始めると明らかにした。当初は19日を予定していた。首都を封鎖し、議会議事堂やホワイトハウス周辺の企業などの立ち入りを禁じる。大統領警護隊(シークレットサービス)が警備計画を立案し、主要区域でバリケードやフェンスの設置を進める。警察犬による不審物への対応を充実し、ワシントン上空の警備も強化する。

ワシントンのバウザー市長は11日の記者会見で「我々の目標は議会で起きた暴力的反乱の再来を防ぐことだ」と指摘し、大統領就任式に合わせてワシントンを訪れないよう国民に呼びかけた。新型コロナウイルス対策もあるが、新政権発足を祝う就任式への参加自粛を求めるのは異例だ。国立公園局は11日、24日までワシントン記念塔を閉鎖すると発表した。

当局は暴動再発に警戒を強める。保守系SNS(交流サイト)のパーラーで「我々は19日に世界が決して忘れない決意で武器を手に戻る」などとの書き込みが最近あったという。トランプ氏の支持者に加え、混乱に便乗する武装勢力がワシントンに再結集する恐れがある。就任式を開く議会議事堂周辺では17~20日に抗議デモの計画があるとされる。

連邦政府の体制に不安もある。国土安全保障省のチャド・ウルフ長官代行が11日、辞任した。同省は国内の治安対策や情報収集を担っており、突然の辞任は大統領就任式の警備態勢をめぐり関係機関との連携に支障を及ぼしかねない。

暴動リスクはワシントンにとどまらない。複数の米メディアによると、米連邦捜査局(FBI)は全米50州の議会に対して武装集団による抗議デモが予定されていると各州に警鐘を鳴らした。

民主党はトランプ氏が暴動の再発を助長しかねないとの危機感を強めており、残り任期はわずかだが罷免手続きを急ぐ。下院は12日、トランプ氏の罷免をペンス副大統領に求める決議案を採決する。可決から24時間以内に罷免を求める内容で、実現しない場合はトランプ氏を弾劾訴追する決議案の採決に移る。民主党は弾劾案を13日にも採決する方針だ。