マハティール氏、米主導IPEFの「中国排除」に懸念

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Nikkei Online, 2022年5月27日 12:35更新

マレーシアのマハティール元首相は27日午前、都内で開かれた第27回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)で講演し、ロシアのウクライナ侵攻について「人類を壊滅させかねない」と述べ、世界大戦につながる恐れを指摘した。米国主導で始動したインド太平洋経済枠組み(IPEF)について「政治的な枠組み」との見方を示し、中国の排除に懸念を示した。

マハティール氏はウクライナ侵攻について「この時代に起きるべきことではなかった」と断じた。侵攻後に北大西洋条約機構(NATO)加盟国がウクライナへの兵器供与に乗り出した点に触れ「もし他の国々も(兵器供与に)積極的な立場をとるようになれば、ロシアは戦争を拡大する気になるだろう」と話し、巻き込まれる国が増えるとの懸念を示した。

ロシアのプーチン大統領と以前に会ったときには「ロシアを復興したいという気持ちにあふれていた」ものの「攻撃的だという印象はなく、他国を侵攻して(領土を)手に入れようとするとは感じなかった」と振り返った。「時間がたって変わったのだろう」と語った。

経済制裁などでロシアへの圧力を強める米国への不信感もにじませた。米国の2003年のイラク戦争を例に挙げ「軍事行動をとっても平和になっていない」と主張した。マレーシアが東南アジアの周辺国との問題を国際司法の場などで解決してきたと説明し「外交や交渉、仲裁などで解決に導くべきだ」と訴えた。

日米韓やマレーシアなどが創設メンバーとなり始動したIPEFについても「経済ではなく政治そのものだ」と否定的な立場を示した。「中国は他国の経済成長に貢献しているのに排除されている」と述べた。中国への対抗を念頭に置いた枠組みへの参加は、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の経済成長に寄与しないとの持論を展開した。

米中関係をめぐっては「中国との共存が重要だと米国は気付くべきだ」と説いた。中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)が目指す3期目続投は「可能だと思う」と述べ、長期政権を固めることで中国が国際的な役割を高められるとの見方を示した。「米国は(中国から)学ぶことがある」とも語った。

マハティール氏が日本を成長モデルとする「ルック・イースト政策」を打ち出してから40年が経過した。「日本は工業や農業の技術分野などでマレーシアや他の途上国にもっと貢献できる」と訴えた。