「プーチンかつてなく孤立」
 バイデン氏が一般教書演説

ロシア機に米領空閉鎖、米国製購入で雇用支える


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Nikkei Online, 2022年3月2日 13:40更新


【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領は1日夜(日本時間2日午前)、上下両院合同会議で内政と外交の施政方針を示す一般教書演説に臨んだ。ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領について「世界を揺るがし、自分のやり方に屈服させようとした。しかし大きな誤算だった」と指摘。「プーチンはかつてないほど世界から孤立している」と敬称をつけず呼び捨てで断じた。

2021年1月に就任したバイデン氏にとって初めての一般教書演説で、約60分間に及んだ。ロシアによる侵攻を「プーチンによるいわれのない不当な戦争だ」と繰り返し批判した。「北大西洋条約機構(NATO)は反応せず、米国も分断できると考えた」と述べ、「プーチンは間違っていた。我々は広範に、慎重に準備した」と強調した。

バイデン氏は演説でロシアのすべての航空機に対し、米国の領空を閉鎖し、通過や着陸を禁止する方針だと明言した。ドイツやフランス、イタリアなど欧州が同様の措置を発表しており「同盟国とともに、ロシアをさらに孤立させ、経済を圧迫させる」と述べた。

一方、ウクライナへの米軍の派遣については改めて否定。ロシアが東欧などに侵攻するのに備え、ポーランドやルーマニア、バルト3国を含むNATOの同盟国を守るために派兵すると説明した。バイデン氏は「独裁者は侵攻の代償を払わなければさらなる混乱を引き起こし、米国と世界のコストと脅威は増大し続ける」と力説した。

ロシアが侵攻を正当化するため、虚偽の情報操作を重ねたと述べたうえで、「プーチンがどのように侵略を正当化しようとしているか事前に世界と共有した。我々はロシアの噓に真実で対抗した」と話した。

バイデン氏はロシアへの経済制裁で協調した欧州連合(EU)、英国、日本、韓国、オーストラリアなどと「責任を追及している」と述べる一方、「民主主義と権威主義の闘いで民主主義は立ち上がりつつあるが、闘いには時間がかかる」と言及した。

一般教書演説の会場にウクライナのオクサナ・マルカロワ駐米大使を招待した。ウクライナとの連帯を示すことで、ロシアに対抗する姿勢を明確にした。

政権運営への審判となる11月の中間選挙をにらみ、ガソリンなどエネルギー価格の高騰を和らげる対策に触れた。1日に国際エネルギー機関(IEA)が発表した石油備蓄の協調放出をめぐり「必要であれば同盟国と協力し、さらなる措置の用意がある」と強調。米国の歴史的な物価上昇について「私の最優先課題は物価の制御だ」と話した。

バイデン氏は「米国でインフラを整備し、イノベーションを起こす」と訴えたうえで、「米国を再建するために税金を使うとき、バイアメリカン、米国製品を買って米国の雇用を支える」と力を込めた。

さらに中国との関係にも触れ、「インフラは米国を変貌させ、21世紀に直面する中国などとの経済競争に勝ち抜く道筋をつける」と明言。「中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席にも伝えた。米国に逆らうのは決して良い賭けではない」と語った。