Nikkei Online, 2022年4月3日 23:37更新
【ワルシャワ=久門武史】ウクライナ政府は2日、首都キーウ(キエフ)を含むキーウ州全域をロシア軍から解放したと発表した。激戦地となり、ロシア軍が撤退したキーウ郊外では多数の民間人が犠牲になったことが判明した。米欧はロシアへの非難を強めており、対ロ制裁の強化に向けた動きが加速している。
ウクライナのマリャル国防次官が2日「キーウ州全域が侵略者から解放された」と宣言。首都近郊のイルピン、ブチャ、ホストメリを取り戻したと表明した。ウクライナ軍も3日、キーウ州北部のプリピャチやベラルーシとの国境付近を奪回したと発表した。
AFP通信などによると、この1カ月にわたってロシア軍が占拠していたブチャでは民間人とみられる服を着た遺体が路上に多数見つかった。両手を縛られた遺体や、買い物袋を握ったままの遺体もあるという。大規模な住民の虐殺が行われた可能性があり、ブチャ市長は、300人以上の市民が殺害されたとロイター通信に述べた。
ウクライナのクレバ外相は3日、ブチャの惨状についてツイッターで「ブチャの虐殺は意図的なものだ。ロシアはできるだけ多くのウクライナ人を殺害しようとしている」と非難した。
民間人への意図的な攻撃は、戦争犯罪に該当する可能性があり、ロシアへの追加制裁を求める声は強まっている。ブリンケン米国務長官は3日、CNNテレビのインタビューでキーウ周辺での多数の民間人殺害の報道について「衝撃的ととらえざるを得ない」と語った。「(ロシアに)責任を取らせる必要がある」と強調し、戦争犯罪の証拠収集を続けて関連機関に提出すると語った。
欧州連合(EU)のミシェル大統領は3日、ブチャの状況に関し「ロシア軍による残虐行為の写真に衝撃を受けた」とツイッターに投稿。「EUのさらなる制裁はまもなくだ」と表明した。
ドイツのベーアボック外相は「ブチャの映像は見るに堪えない。プーチン大統領の暴力は歯止めがない」とツイッターで批判。「我々はロシアへの制裁を強化する」とも述べ、追加制裁を検討していることを明らかにした。
Nikkei Online, 2022年4月4日 4:51更新
【イスタンブール=木寺もも子、
ニューヨーク=大島有美子】
ロシアがウクライナの占領地で市民を虐殺した疑いが浮上し、欧米各国が3日「戦争犯罪」などとして非難した。ロシア軍が撤退した後の首都キーウ(キエフ)近郊で民間人とみられる多数の遺体が見つかっており、対ロ制裁をさらに強化すべきだとの声が高まっている。
ウクライナ検察は3日、2日までに奪回したキーウ近郊のブチャ、イルピンなどで民間人410人の遺体が見つかったと明らかにした。現地入りした欧米のメディアは路上に多くの遺体が横たわる写真や映像を伝えた。両手を後ろで縛られた遺体や多数の銃弾を受けた遺体もあるという。
ジョンソン英首相は声明で「プーチンとその軍団による新たな戦争犯罪だ」などと激しく非難した。「プーチンの戦争マシンを干上がらせるためにできることは何でもする」と述べ、制裁やウクライナへの軍事支援を強化する考えを示した。
ドイツのランブレヒト国防相は「犯罪行為には報いがなければいけない」として、欧州連合(EU)はロシア産ガスの輸入禁止を議論すべきだと主張した。国防省がツイッターで発言を紹介した。
マクロン仏大統領もツイッターで「ロシア当局はこうした犯罪に回答しなければいけない」と述べた。
ブリンケン米国務長官は米CNNの番組で「我々はロシア軍が戦争犯罪を行ったと確信しており、関連する情報をまとめようとしてきた」として、ロシア軍の責任を追及する構えだ。ウクライナへ兵器の支援を惜しまない姿勢も強調した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、米CBSの番組で、特定集団を抹殺するための大量虐殺を意味する「ジェノサイド」だと主張した。
一方、ロシア国防省は3日、「市民の誰一人としてロシア軍による暴力を受けていない」と疑惑を否定したうえ、殺害された人々の映像や写真は「ウクライナ側による挑発だ」と非難した。
国連のグテレス事務総長は、映像などに「深い衝撃を受けている」として、独立した調査による事態の解明が必要だと述べた。
AP通信はブチャ住民の話として、ロシア軍が地下の防空壕(ごう)を一つ一つ訪れて住民のスマートフォンを調べ、SNS(交流サイト)の履歴などから反ロシア的だと判断した人を射殺したり連れ去ったりしたと報じた。
英BBC(電子版)はキーウ近郊の路上で3月上旬、ロシア軍の戦車に向かって両手を挙げて民間人だとアピールした後に射殺された夫妻のものとみられる遺体が見つかったとも報じた。