安保理、民間人殺害を各国が非難 「戦争犯罪」指摘も

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Nikkei Online, 2022年4月6日 12:09更新

トーマスグリーンフィールド米国連大使は
5日「国連人権理事会へのロシアの参加は
国連全体を弱体化させる」と述べた=AP

【ニューヨーク=白岩ひおな】国連安全保障理事会は5日、ウクライナでのロシア軍による民間人殺害をめぐる緊急会合を開いた。米国のトーマスグリーンフィールド国連大使はロシアの国連人権理事会の資格停止を求めた。各国からは首都キーウ(キエフ)郊外ブチャなどでの民間人殺害への非難が相次ぎ、米欧などは「戦争犯罪」や「人道に対する罪」にあたる可能性があると指摘した。

「ロシア軍は市民を意図的に殺害した。ある者は拷問を受け、ある者は路上で撃たれた」。冒頭、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで演説し、ブチャの惨状を訴えた。ロシアによる民間人殺害を「第2次世界大戦後、最も恐ろしい戦争犯罪だ。ロシア軍と彼らに命令した者に直ちに法の裁きを下さなければならない」と糾弾した。「国連の機能不全は明らかだ」と指摘したうえで「安保理の拒否権が死の権利にならないよう、国連を改革しなければならない」と訴えた。直ちに行動できない場合、国連は「解散」すべきだとも述べた。

ロシアによる民間人の殺害が戦争犯罪にあたるかどうかをめぐっては、各国に温度差もある。 広義の戦争犯罪は

    ①集団殺害犯罪(ジェノサイド)
    ②人道に対する犯罪
    ③戦争犯罪
    ④侵略犯罪
――に分かれる。 米欧などは、民間人や民間施設への故意の攻撃といった戦争犯罪や、広範囲・組織的な住民の殺害や性的暴行など人道に対する罪にあたるとの考えを示した。一方、中国やインドは民間人の攻撃や殺害を非難するにとどめた。


グテレス国連事務総長は「無差別攻撃は国際人道法の下で禁止されており、戦争犯罪に相当する可能性がある」と強調し、独立した調査を呼びかけた。米国のトーマスグリーンフィールド大使は「米国はロシア軍がウクライナで戦争犯罪をしたとみなしている」と明言。「ロシアの国連人権理事会への参加は国連全体を弱体化させる」とも述べ、ロシアの資格停止を求めた。週内にも国連総会での採決をめざしている。

4日の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は衛星画像などから、ブチャで多数の住民がロシア軍の撤収前に殺害されたと特定した。ロシアのネベンジャ大使は「米欧だけが引っかかるフェイクだ」などと主張し殺害を否定したが、英国のウッドワード大使は「遺体がブチャで数週間放置されていたと衛星画像で確認できている」と反論した。

国連人権高等弁務官事務所によると、ウクライナでは少なくとも1480人の民間人が死亡し、2195人が負傷した。ブチャなどでは民間人410人の遺体が見つかり、キーウ北西のボロディアンカではさらに犠牲者が多数に上るとみられる。

 

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