Nikkei Online, 2022年5月2日 8:15
【ウィーン=細川倫太郎】ウクライナのベネディクトワ検事総長は1日、9000件を超えるロシア軍の戦争犯罪について捜査を始めたことを明らかにした。民間人の殺害やロシアへの子供の強制移送が疑われるとし、一部は容疑者を特定したと述べた。ロシア軍はウクライナ東部地域などで激しい攻撃を続けており、民間人の犠牲者も増えている。
ウクライナメディアが報じた。ベネディクトワ氏は「現在までに戦争犯罪に関する9158件の事件がある」と述べた。首都キーウ(キエフ)周辺地域では「拷問やレイプ、略奪の罪で裁判にかける(容疑者が)15人いる」と説明した。
南東部マリウポリではロシア軍が民間人を大量虐殺した疑いが出ている。近郊では複数の集団墓地が確認された。戦争犯罪を隠蔽するために設けられた可能性があるという。
同市でウクライナ側の抵抗拠点となっている巨大製鉄所からは、国連などが主導して民間人の避難が始まった。ゼレンスキー大統領は1日のビデオ演説で、避難の第1陣として「女性や子供100人以上がすでに避難した」と明かした。
ロシア軍は1日も東部ドネツク州などで攻撃を続け、民間人の死傷者が出た。北東部ハリコフ州知事によると、同州では砲撃で3人が死亡、8人が負傷した。
ロシア軍が3月に制圧した南部ヘルソンやその周辺地域では1日からロシア通貨ルーブルの使用を強制する動きが始まったと伝えられている。ウクライナ当局は、同地域でインターネット通信も途絶えたと明らかにした。英国防省は同日、長期にわたりヘルソンを支配下に置く意図がロシア側にあると分析した。