Nikkei Online, 2022年5月8日 6:45更新
【ドバイ=福冨隼太郎】ウクライナのベレシチュク副首相は7日、南東部の港湾都市マリウポリのアゾフスターリ製鉄所で「全ての女性、子どもと高齢者の避難が完了した」と明らかにした。ロシア国防省も同日、民間人の避難が完了したと発表した。難航していた避難が完了したことで、ロシア軍による攻撃が激しくなる可能性がある。
アゾフスターリ製鉄所ではウクライナ内務省系の「アゾフ連隊」が民間人とともに立てこもっていた。同製鉄所では国連などによる民間人救出作戦が進められていた。ベレシチュク氏はSNS(交流サイト)で「(製鉄所からの女性らの避難完了で)マリウポリの人道作戦のこの部分は完了した」とした。
ウクライナのゼレンスキー大統領は同日夜の声明で「女性や子どもなど300人以上が救われた。事実上、我々は民間人を製鉄所から避難させた」と語った。同時に、避難作戦の「第2段階」として製鉄所内に残る負傷した戦闘員らの避難を準備しているほか、マリウポリとその周辺の全住民の避難のための「人道回廊」の設置を進めていると明らかにした。
ロイター通信などによると、これに先立ち親ロ派「ドネツク人民共和国」が、7日に50人の市民が製鉄所から避難したと主張していた。一方、ウクライナ側はロシア軍が砲撃などによる軍事作戦を続けていると主張。退避が難航しているとの見方も出ていた。
国連のグテレス事務総長は4月26日にロシアを訪問した際、プーチン大統領に製鉄所を含む民間人の脱出のための人道回廊の設置を求めていた。ロシアは9日に対独戦勝記念日を控えている。民間人の退避が完了したことで、成果を求めるロシア軍が製鉄所への攻撃を激化させる可能性もある。
マリウポリはロシアが2014年に一方的に併合したクリミア半島と親ロ派勢力が実効支配を強める東部の間に位置する戦略上の要衝だ。ロシア軍が占領すればウクライナ東部から南部を地続きで管理できるようになる。
主要7カ国(G7)は8日、ゼレンスキー氏とのオンライン会議を開き、ロシアによる侵攻について話し合う予定だ。