Nikkei Online, 2023年5月5日 10:17
【ワシントン=坂口幸裕】米情報機関トップのヘインズ国家情報長官は4日、中国による侵攻で台湾の半導体生産が停止すれば世界経済は最大で年間1兆ドル(約134兆円)規模の打撃を受けるとの試算を示した。連邦議会上院の軍事委員会が開いた公聴会で証言した。
公聴会で中国による武力行使で半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)の生産が止まれば「世界経済に甚大な影響を与える」と指摘。推計として、侵攻後の数年間は年間6000億ドルから1兆ドルの損失を被る可能性があると言及した。
ヘインズ氏は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が平和的手段で台湾を統一したい意向だと評価しつつ「中国軍に軍事的選択肢を提供するよう指示した」と述べた。「米国の国内総生産(GDP)にも影響する」と指摘する一方、中国経済も深刻な打撃を受けると警鐘を鳴らした。
国家情報長官室は米政府の情報機関を統括する組織になる。同室は3月に公表した2023年版の報告書で、中国が台湾侵攻に将来踏み切る場合に備え、米国の介入を抑止できる軍事力を27年までに整える目標に取り組んでいると分析した。
中国人民解放軍について「海軍と空軍は地域で最大規模だ」と評価。人民解放軍が軍事力を行使すれば「(周辺に展開する)米軍と基地を危機に陥れることができる」と危機感を示した。
クリテンブリンク米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は2日の上院公聴会で「(米国は)抑止力で台湾海峡の平和と安定を維持することに重点を置いている」などと話した。
2月には米中央情報局(CIA)のバーンズ長官も習氏が27年までに台湾侵攻を成功させるための準備を中国人民解放軍に指示したとの情報を把握していると明らかにした。