トランプ氏「グリーンランド関税」見送り

 NATOと合意枠組み構築

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Nikkei Online, 2026年1月22日 8:35更新

トランプ米大統領㊨は21日、スイスでNATOのルッテ事務総長と会談した=AP

【ワシントン=坂口幸裕、ブリュッセル=辻隆史】トランプ米大統領は21日、取得をめざすデンマーク自治領グリーンランドを巡る対立を発端に課す予定だった欧州8カ国への追加関税を見送ると表明した。自身のSNSで北大西洋条約機構(NATO)との間で「グリーンランド、北極圏全体に関する将来の合意の枠組みを構築した」と明かした。

NATOのルッテ事務総長と会談

トランプ氏は世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)出席のため訪れているスイスで、NATOのルッテ事務総長と会談した。終了後にSNSに合意した枠組みに関し「この解決策が実現すれば、米国とすべてのNATO加盟国にとって素晴らしいものになる」と記した。

枠組みの詳細やグリーンランド領有をめざす立場に変化があったかどうか言及しなかった。NATOとの合意を踏まえ「2月1日に発効予定だった関税を課さない」と投稿した。全米防衛システム「ゴールデンドーム」構想を巡っても協議していると説明した。

米国のバンス副大統領、ルビオ国務長官、ウィットコフ中東担当特使が交渉を担う。米CNNによると、トランプ氏は現地で記者団に「これは究極の長期的な合意だ。すべての関係者にとって非常に良い状況をもたらすと思う」と発言した。

トランプ氏は会談後、米CNBCテレビのインタビューで「我々には合意の構想がある。米国にとっても彼ら(欧州)にとっても非常に良い合意になるだろう」と話した。「北極圏全体、グリーンランドに関する問題で協力していく。すばらしく強固な安全保障にかかわる」と語った。

領有権に関する合意かと問われ「少し複雑だが、その件は改めて説明する。私が望んでいたような合意だ」と述べるにとどめた。

軍事行動は「必要ない」

トランプ氏は17日、米国がグリーンランドを取得するまで欧州8カ国からの輸入品に10%の追加関税をかけると表明した。デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、ドイツ、英国、オランダ、フィンランドを対象に、2月1日に10%の関税を発動し、6月1日に税率を25%に引き上げる計画だった。

欧州側からは「歓迎する」(イタリアのメローニ首相)との声が出た。17日に米国が8カ国への追加関税を課すと発表したのを受け、欧州連合(EU)の立法機関である欧州議会はEUと米国が合意した貿易協定の承認を延期すると決めていたが、手続きを再始動する可能性がある。

デンマークのラスムセン外相は21日、X(旧ツイッター)に「武力によるグリーンランド併合を取得を否定し、貿易戦争を停止したことを歓迎する」と書き込んだ。「北極圏での米国の安保上の懸念に対処しつつ、デンマークのレッドライン(越えられない一線)を尊重する方法を見つけよう」と呼びかけた。

ルッテ氏との会談に先立ち、トランプ氏はダボス会議でグリーンランド獲得は米国の安全保障へ不可欠だとの認識を重ねて強調した。同時に「軍事行動は選択肢にない。必要ない」と明言した。

武力行使も辞さない構えで圧力をかけてきた姿勢を転換し、交渉による領有をめざす意向を示した。20日にはグリーンランドを巡って対立する米欧の間で「満足できる解決策を見つけられるだろう」と語っていた。

NATOへの不信感もあらわにした。トランプ氏はダボスでの演説で「NATOの問題点は、我々は彼らを100%守るが、彼らが我々を守ってくれるか確信が持てないことだ」と唱えた。

中ロ対策が焦点に

ルッテ氏は21日、ダボス会議での会合で「(NATOは米国支援へ)必ず駆けつける」と反論した。2001年の米同時テロを受けてNATO軍が米軍を支援した経緯に触れ「相互防衛のために我々は互いを必要としている」と強調した。

欧州の脅威であるロシア抑止につながるNATOの欧州防衛態勢は、米軍に依存する。ロシアの侵略を受けるウクライナへの支援も米国に頼る状況が続く。米国が欧州やウクライナへの関与を低下させれば、ロシアの思うつぼだ。

トランプ氏とルッテ氏が「合意した枠組み」を踏まえ、北極圏での活動を活発化させるロシア・中国を安全保障上の脅威と位置づける米国の懸念を払拭できるかが焦点になる。


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