Source: Nikkei Online, 2025年9月22日 18:00
バルト3国の一つであるラトビアがドローン(無人機)戦を戦うウクライナへの支援のため立ち上げた西側諸国の「ドローン連合」について、日本政府に参加を打診していることがわかった。日本の防衛省も招請の事実を認め、参加の是非を検討していると明らかにした。
ラトビアのブラジェ外相は都内で日本経済新聞のインタビューに答え「日本の参加が招請されている」と言明した。
同連合はウクライナへのドローンや関連部品の供給のほか、各国の関連産業の技術協力を目指す枠組みだ。ラトビアの提案で2024年2月に発足した。
英国、ウクライナ、フランス、イタリア、ドイツ、トルコなど欧州を中心に20カ国が参加している。日本が参加すればアジア勢で初めてとなる。
各国はウクライナでの貴重な実戦経験に基づく知見を取り込む場として重視している。同連合によるウクライナへの支援総額は24年時点で18億ユーロ(約3100億円)に達した。ラトビアなど多くの参加国は自国のドローン産業の育成につなげてきた。日本側も連合が蓄積した知見を生かし、ドローン防衛に役立てられる。
ブラジェ氏は、ウクライナ戦争でドローンは大きな技術発展を遂げたと指摘した。「我々の急務の課題はウクライナから学んだ教訓を最大限に活用して試験や生産に生かすことだ」と語った。
協力の対象としては「攻撃用だけでなく、防衛用や迎撃用ドローンもある。これらは電子戦、測位やその他のあらゆる用途に使用できる」と述べた。法的に日本の参加が難しい殺傷性がある装備以外でも、探知や偵察の分野で協力の余地が大きいとの見方を示したものだ。
ウクライナ戦争ではウクライナ・ロシア双方の戦果の8割はドローンによる攻撃が占めていると推計され、砲撃や空爆でもドローンによる情報収集は不可欠になっている。ロシアや同国に援軍を派遣した北朝鮮はウクライナ戦争を契機に、ドローン戦の能力や生産基盤を一気に向上させた。
中国のドローン産業も世界最大規模に成長しており、日本にとっても防衛面での対策が急務になっている。10月の自民党総裁選を経て発足する新政権が、ドローン連合への関与のあり方について判断するとみられる。
ブラジェ氏はロシアによるSNSなどを通じた西側各国への偽情報工作が拡大しているとも言及した。「ロシアは情報空間を通じて各国に干渉するための戦術を編み出そうとしている」と強調。「社会を可能な限り分断し、政治的な意思決定を困難にする戦略の一環だ」と説いた。
ロシアと国境を接するラトビアは北大西洋条約機構(NATO)の戦略的コミュニケーション研究センターのホスト国となり、西側の偽情報対策をリードしてきた。ブラジェ氏はロシアの情報工作への対応は「日本との知識の交換が非常に有益な分野の一つだ」と唱えた。
3年半にわたって続くロシアのウクライナに対する大規模侵略をめぐり「ウクライナは我々にとって抑止力であり、安全を保証する存在だ。侵略を禁止した国連憲章のために戦っている」と言明した。同国への支援を継続すると同時に、ロシアの継戦能力を支えるエネルギー収入を細らせる必要性を強調した。
(編集委員 田中孝幸)