トランプ氏とネタニヤフ氏、
20項目のガザ和平案合意
 ハマスに受諾迫る

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Source: Nikkei Online, 2025年9月30日 6:55更新

【ワシントン=坂口幸裕、テルアビブ=岐部秀光】トランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は29日、ホワイトハウスで会談した。両首脳は会談後の共同記者会見で、パレスチナ自治区ガザの恒久停戦や戦後統治計画を示した米国の新提案で合意したと明らかにした。イスラム組織ハマスに受諾を迫り、拒否すればハマス壊滅へ米国がイスラエルを支援すると警告した。

トランプ氏は記者会見で「この計画に同意したネタニヤフ氏に感謝したい」と述べた。ガザでの和平合意を念頭に「我々は非常に近いところまで来ている」との認識を示した。

ネタニヤフ氏は、トランプ氏の指導力のもとで「我々は戦争に勝利し、和平を拡大するための次の段階へ進んでいる」と語った。「ハマスが計画に同意すれば第1段階として(イスラエル軍は)小規模な撤退をし、72時間以内に人質全員が解放されるだろう」と話した。

ガザ統治の新組織、トップはトランプ氏

ホワイトハウスが29日発表した20項目の和平案によると、ガザ統治を監視する新組織を立ち上げ、トランプ氏がトップを務める。英国のブレア元首相のほか、他の国家指導者も参画する。詳細は近く詰めたうえで発表する。

ガザ統治に関し「ハマスは直接的にも間接的にもいかなる形態でも関与しないと合意する」と明記した。トンネルや兵器生産施設などすべての軍事インフラを破壊し、再建できないようにするとうたい、新組織のもとでガザの非軍事化を担保する。

ネタニヤフ氏に握手の手を差し伸べるトランプ氏(29日、ホワイトハウス)=ロイター

アラブ諸国や他の国などと協力し、ガザに展開する国際安定部隊(ISF)の編成も盛り込んだ。ヨルダンやエジプトと協議し、長期的な治安対策を担うパレスチナ部隊の訓練や支援を実施する。

イスラエルはガザの占領や併合をしないと明記した。ISFがガザの安定を確立すれば、イスラエル軍は段階的に撤退すると提起した。一方、テロ再発の脅威がなくなるまでは一定区域にイスラエルの駐留部隊をとどまらせる方針も示した。

ガザ復興の経済開発計画も策定する。税制優遇などを適用される特別経済区を設置する。トランプ氏が提唱した住民を近隣国に移住させ、米国がガザを一時的に所有して再開発する案は見送り「退去は強制されず、希望すれば自由に去り、帰還できる」と強調した。

ハマスは72時間以内に人質解放

米国の新提案には火種や疑問が残る。72時間以内にハマスは生死にかかわらず人質全員を解放する必要がある。

今回の提案が従来と異なるのは、ハマスが提案の実行を遅らせたり拒否したりした場合でも合意を進めることが明記されている点だ。人質を失った途端にハマスは切り札を失うことになる。

互いの表情をうかがうトランプ氏とネタニヤフ氏(29日、ホワイトハウス)=ロイター

武装解除に応じたハマスのメンバーには恩赦を約束した。ハマスを受け入れてきた仲介国カタールは避難先の候補となる。ハマスが提案を事実上拒否することになれば、イスラエルはガザ市制圧作戦を続行する。

パレスチナ国家創設は曖昧な表現にとどめた。パレスチナ自治政府の改革を条件に「自立と国家づくりへの信頼できる道筋の条件が整うかもしれない」と記した。パレスチナの国家建設には極右だけでなくイスラエル人一般にも反対論や懐疑論が多い。

両首脳の記者会見、質問は受けず

トランプ氏は記者会見で、第1次トランプ政権で合意したイスラエルとアラブ諸国の国交正常化「アブラハム合意」の拡大も議論したと明かした。今回の新提案を念頭に「これは中東和平というより大きな構想の一部に過ぎない。これを中東の恒久和平と呼ぼう」と訴えた。

アラブ諸国に触れ「ガザ住民と地域全体の利益のために自らの責務を果たす準備が整っている」と唱えた。「暴力と破壊の終結を望む全ての人々は、ハマスに極めて公平な提案を受け入れるよう一致して求めるべきだ」と言及した。

両首脳がそれぞれ話した後、記者からの質疑を受け付けずに一方的に打ち切った。1月に発足した第2次トランプ政権でネタニヤフ氏がホワイトハウスを訪れるのは7月以来、4回目。ハマスがイスラエルを奇襲攻撃してから10月7日で2年になる。

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