Source: Nikkei Online, 2026年1月10日 15:00

日本企業は中国が尖閣諸島問題を巡りレアアース(希土類)の輸出を規制した2010年の危機をきっかけに、様々な備えを進めている。JX金属や大手商社などが中国以外の海外からの調達ルート確保に動いているほか、プロテリアル(旧日立金属)などはレアアースを使わない技術の開発にも力を注いでいる。
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「南米とオセアニア、南アフリカに資源担当者を配置して(レアアースを)開発できるような場所がないか常にウオッチしている」。JX金属の林陽一社長はこう強調する。
JX金属は25年6月にオーストラリアのレアメタル(希少金属)やレアアースの鉱床に5%出資すると発表した。追加出資も検討している。同年11月には丸紅も同じ鉱床に出資すると表明しており、日本勢の比率が高まる。
豪州に続くレアアース権益の確保についてもJX金属の林氏は「当然探っている」と語る。同社は半導体の材料にレアアースを使っており、調達先には中国も含まれる。必要な量を安定的に確保するのが喫緊の課題となっている。
国内商社もレアアース確保に動く。双日は25年10月に希少性の高い「重希土類」のレアアースを豪州から初輸入した。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と岩谷産業の共同出資会社も25年にレアアース精錬を手掛けるフランス企業に出資したほか、豊田通商や住友商事も調達先の多角化に動く。
レアアースは1980年代まで米国などが主な生産地だったが、中国で鉱山開発企業が乱立し低価格での輸出攻勢をかけた。当時の中国は環境規制が緩く、採掘や精錬の過程で生じる放射性廃棄物やレアアース抽出に使う酸性液の処理が不十分でも許された。
環境対策費用は安く、生産コストを米国などに比べて圧倒的に下げられる「メリット」を生かした。結果、中国の生産量は伸びレアアース大国となった。仮に日本企業が権益を確保しても、コスト面で圧倒する中国にどう対抗するかという課題は残る。
レアアースの必要性を技術革新で乗り越える取り組みも進んでいる。プロテリアルは電気自動車(EV)の駆動用モーター向けに、重希土類のレアアースを使わない磁石を開発した。
25年4月に米国の相互関税への報復の一環で中国政府が7種類のレアアースの輸出規制に踏み切った際には、日本の自動車大手が生産の一時停止に追い込まれた。重希土類なしでEVモーターにも使える磁石が実現すれば、こうした供給不安を軽減できる。
リサイクルの技術開発も進む。ネオジム磁石大手の信越化学工業は日本とベトナムにリサイクルの拠点を持ち、使用済みレアアース製品や製造工程で出てきた端材などを回収して循環させる。トヨタ自動車と組んで、ハイブリッド車(HV)のモーターに使われる資源の再利用も実現している。
日本企業は過去の教訓を生かし、省レアアースのネオジム磁石や代替技術の開発、リサイクルなどを進めてきた。ただ安い中国製ネオジム磁石の優位を崩すまでには至らず、導入は広がっていない。レアアースの安定確保という世界的な課題の解決に寄与するためこれまでの取り組みをどう生かすか、官民が連携し知恵を絞る必要がある。
(茂野新太)