ラグビー日本代表、「難しい」初戦で躍動感 チリに快勝

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Nikkei Online, 2023年9月10日 23:49

ラグビーW杯フランス大会でチリに勝利し、喜ぶ日本フィフティーン(10日、トゥールーズ)=共同

前半6分、日本はこぼれ球をうまく処理したチリに先制トライを奪われた。やはり1次リーグ初戦でロシアに先制トライを許した2019年大会同様、「格下」を相手にした一戦の入りの難しさを感じさせた。ただ、日本開催の重圧に苦しんだ4年前とは異なり、この日は本来の躍動感を取り戻すのにそう時間はかからなかった。

再開のキックを蹴り込むと同時に日本の面々が猛然と敵陣深くへ走る。このプレッシャーが相手の落球を誘ってボールを奪うと、フェーズを重ねた末にロックのA・ファカタバがトライ。SO松田のコンバージョンも決まり、たちまち同点に追い付いた。0-7とされてからわずか3分。チリの優位を早々に解消したことが効いた。

前半、チーム1本目のトライを決めたA・ファカタバ(左)と喜ぶ松田=共同

前半30分には敵陣ゴールライン手前のスクラムから狭いサイドを突き、WTBナイカブラが2人に絡まれながらトライ。同41分はラインアウトで捕球した選手がすぐにチリのFWが手薄な側にパス。モールで優勢とし、ファカタバがインゴールに持ち込んだ。

後半早々、CTBライリーがイエローカードで一時退場となった。大会前の強化試合では危険なタックルがカードにつながったが、この日のライリーは故意に相手ボールをたたき落とす反則。強化試合を教訓に慎重に下へのタックルに腐心していた日本にとって、思わぬ落とし穴だった。

1人少ない劣勢で、たびたび突破を許していた密集脇を突かれてトライを奪われた。それでも、相手キックを捕ったところからナイカブラが切れ味鋭いランで大きく陣地を挽回し、FWの連続攻撃からフランカーのリーチがトライ。1人欠く状況で相手に点差を詰めさせなかったのは大きい。

後半、タックルする流。奥は堀江=共同

前半はチリの堅実なモールディフェンスや、シンプルな形から防御ラインを破る攻撃にてこずった。「チリのフィジカルに苦戦することも多々あった」とSH流。それでも後半は相手ラインアウトをスチールしたり、途中出場した堀江らを軸にスクラムを自在に押したりとセットプレーが安定。チリがラインアウトの整列で時間をかけるなど暑さによる消耗が目立った一方、7〜8月に蒸し暑い国内で連戦をこなした日本は最後まで意気軒高だった。

ナンバー8で先発するはずが左脚のけがで欠場した主将の姫野、プレーから一呼吸置いて激しいタックルを受け膝を負傷したプロップ具智元の状態が気がかりだが、「最後まで自分たちのゲームプランを遂行することができてよかった」とゲーム主将を務めた流。リーチが「一番難しい」と話した初戦で快勝し、確かな手応えをつかんだ。

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ラグビー日本代表、必達の勝ち点5 PG狙わず6トライ

Source: Nikkei Online, 2023年9月11日 10:35

日本―チリ 中村(中央)がトライを決める(トゥールーズ)=ロイター

チリファンの応援には迫力があった。試合前から初出場の選手を後押しする歓声や大合唱。日本の陣地に攻め込み、こぼれ球をうまく処理してトライにつなげた先制点は、その熱気が乗り移ったようだった。

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前回大会に続き、初戦は簡単ではないと思い知らされるような幕開け。相手のフィジカルの強さは戦前の予想通りだった。だが、80分を通して日本の試合運びは落ち着いていた。

失点直後のキックオフのボールを確保してA・ファカタバのトライが生まれると、反撃へのスイッチが入り、相手が1人少ない状況でさらに2トライ。「選手はパニックを起こさず、自分や試合をコントロールすることに重きを置いていた」。SH流が語るように、疲労で運動量が落ちたチリに対して後半もボールを動かして得点を重ねた。

PGを狙えるチャンスは何度もあったが、「(相手の反則からは)タッチキックを選び、敵陣にとどまり続けることがプランだった」とプロップ稲垣。トライを取りに行く意識はチームに共有されていた。

日本―チリ 前半、自身2本目のトライを決めるA・ファカタバ(トゥールーズ)=共同

今後の戦いを踏まえれば、4トライ以上で獲得できるボーナスポイントを含めた勝ち点5は必須で「ボーナスポイントを取って勝てたことが全て」と稲垣。内容も問われていただけに、6トライを挙げて必達のノルマをクリアできたことは大きい。

当日に姫野主将の欠場が決まってもチームは揺るがなかった。ゲーム主将を務めた流は「あまり背負いすぎず、普段通りのリーダーシップを発揮しようと思った」と冷静に統率。攻撃をリードし、ゴールキックを6本全て決めたSO松田も「ハドルを組んで、どんな時もみんな目を合わせて話そうと言っていた。みんなでひとつの絵を見ることができた」と胸を張る。これまで多くのリーダーを育ててきた成果が大舞台で生かされた。

今夏の実戦は1勝5敗と苦しんだ。その結果が本番に直結しないとはいえ、やはり選手には緊張や重圧があっただろう。「ポジティブな結果が出て、チームのスタートとしては良かった」とジョセフ・ヘッドコーチ。狙い通りの形で強豪イングランド戦に向かえることは、チームに勇気を与える。

(渡辺岳史)

チリに勝利し場内を一周する日本代表の(右から)坂手、バルら(トゥールーズ)=共同

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