Nikkei Online, 2020/10/10 2:00
最近の特徴は、大きな高気圧が日本付近を通過することだ。日本の南海上には夏の名残の暖かく湿った空気が残っており、高気圧の後ろ側に入ると南風が西日本や東日本に入って気温が上がる。夏の天気図のような気圧配置も見られた。ただ、高気圧の軸が北にずれると本州の南岸に前線が停滞し、太平洋側を中心に雲が多くなり気温も下がる。今週半ばのぐずついた天気は、こうした理由によるものだ。
8月半ば以降の全国の傾向をみると、気温が急降下してしばらく低温傾向が続いたあと、大きく上昇するケースが2回あった。最初の低下は8月中旬、2回目は9月前半に下がり、いずれも2週間前後で上昇に転じた。そして今週末から週明けにかけて、3回目の大きな気温低下が予想される。
そのきっかけとなるのが、低気圧の通過と顕著な寒冷前線の南下だ。一雨降ったあと、大陸の強い高気圧が張り出し、上空約5500メートルで氷点下20度以下の寒気が北日本付近を通過する見通しだ。本州上空にも一時的に冷たい空気が流れ込む。朝晩の気温はかなり下がり、平年を下回ることもありそうだ。これまで、平年を大きく上回る高温の日が多かったため、数字以上に肌寒く感じるかもしれない。
高気圧が去る来週には、再び気温が上がるとみられる。ただ、西日本や東日本で最高気温が30度以上の真夏日が続出するような異常な暑さにはなりそうもない。遅れていた紅葉も、ようやく進み始めるだろう。
夏から秋への天気の移行が遅れた分、秋から冬への移り変わりも遅くなるのだろうか。はっきりしたことはわからないが、今年の場合は逆に寒い天候が早めにやってくる可能性がある。熱帯太平洋の海面水温分布が、ラニーニャの特徴を示しつつあるからだ。2020年夏~21年春もラニーニャが起きたので、2年連続となる。ふた冬続けてラニーニャと重なるのは、極めて珍しい。
ラニーニャは南米沖など熱帯太平洋東部で水温が平年より低め、日本の南海上など西部で高めとなる現象だ。この影響で上空の偏西風の流れが日本付近で北西から南東に向かい、寒気が南下しやすくなることが多い。
世界の複数の気象機関の予測によると、ラニーニャがもっともはっきりするのは11月~22年1月ごろになりそうだ。気象との関係は単純ではないものの、冬の前半に寒くなる可能性がある。変動が激しいのも最近の気象の特徴なので、非常に寒い日が続いた後、急に暖かくなり、その直後に再び冷え込むといったことが繰り返すかもしれない。そうなると体への負担も大きいので、体調管理には注意したい。