三菱UFJ、同僚は「AI行員」

 スピーチライターなど20業務で導入


Source: Nikkei Online, 2026年1月26日 5:00

三菱UFJフィナンシャル・グループは「AI行員」の実装で生産性を高める

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、行員と一緒に業務を担う人工知能(AI)エージェント「AI行員」を1月から順次実装する。スピーチライターや中途社員の問い合わせへの応答など、特定の20業務でそれぞれAI行員をつくる。同社が目指す人間とAIを融合させた「AIネーティブ」な組織作りの象徴的な施策と位置づける。

三菱UFJ銀行の本部行員を中心に利用を始める。AIが人間の代わりに自律的に作業をこなすAIエージェントを邦銀が本格的に取り入れるのは珍しい。

AI行員はデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を担うMUFGデジタル戦略統括部が中心となり、MUFG子会社のジャパン・デジタル・デザイン(東京・中央)を含む自社で開発・運用する。エンジンモデルの一部には米オープンAIのモデルも使う。

AI行員の一つとして、1月にも「AIスピーチライター」の利用を始める。役員などの過去の発言録や時事ネタなどを学習したAIに対し、例えば「新年の挨拶の原稿を作って」と指示すると、何度かのやり取りを経てドラフトができあがる。従来のように人間同士がやり取りしながら原稿案を作るよりも時間がかからず、生産性が高まる。

MUFGデジタル戦略統括部の新入・中途採用者を助けるAI行員「デジ戦ベテランさん」も近く稼働する。外部委託をする際の手順や社内手続きなどに関する疑問にいつでも答える。

同部は体制変更に伴い、2024年度に新設した。26年度の人員を体制変更前の23年度比3倍の300人超にする方針だ。毎月のように中途採用者が入社し、中途採用比率は26年度に5割を超える見込み。社内ルールなど同じ説明をする既存社員の負担が減るほか、新たに入社した人の混乱も起きにくくなり、職場への早期順応をサポートする。

AI行員のマネジメントは、デジタル戦略統括部AI・データ推進グループのAIタレントチームが担い、銀行全体での利活用を進める。同チームは、人間と同じ採用から配置までの人事プロセスになぞらえて3段階で活動する。


現在はAI行員の「採用」段階と位置づける。どの業務・部署でニーズがあるかを検討し、AIエージェントを構築する。3月末までに次の「育成」段階に入る。各部署にAI行員を導入し、利用する行員が精度を高められる体制にする。26年度には最後の「配置」段階に移行し、銀行全体でAI行員を活用できるようにする。

AI行員が不具合を起こさないよう監視するなど適切な運用体制も整える。

MUFGは24年度に全社横断のAIインテリジェンスチームを設置した。日本発のSakana AI(東京・港)やLayerX(東京・中央)、米オープンAIなど国内外のAI企業とも連携する。AI領域には26年度までの3年間で600億円を投資し、業務効率化の経済的効果と収益貢献をあわせた「期待効果」は26年度までで300億円を見込む。

全社で日常的に使うAIの利用事例は500件規模に達した。持ち株会社ベースでは60件超の事例で活用を検討・開発している。AIの活用で生産性を高め、人間が付加価値の高い仕事に集中できるようにする。

他のメガバンクも積極的にAIへの投資や利活用を進めている。

三井住友フィナンシャルグループは28年度までに生成AIや専門人材の採用に500億円を投資する方針だ。米マイクロソフトアジアで社長を務めたアーメッド・マザーリ氏と共同で、シンガポールにAI開発の新会社を25年に設立した。業務効率化のほか、将来的には顧客向けのAIサービスの販売も視野に入れる。

みずほフィナンシャルグループも28年度までの3年間でAI関連に500億〜1000億円を投資する。業務の効率化や顧客サービスにAIを導入する方針で、専門人材の獲得やAIの技術を持つ企業の買収に充てる。

今後はAIと顧客が対話する「AIアシスタント」を銀行アプリに導入するほか、顧客への提案作成を支援する営業担当者向けAIの導入も計画している。