Source: Nikkei Online, 2026年2月14日 3:49

【シリコンバレー=山田遼太郎】人工知能(AI)によるプログラミングの自動化が急速に進んでいる。米オープン AIや米アンソロピックの最新 AIにソースコードの生成を任せ、トップ技術者でさえ腕前でかなわなくなった。 AIの進化で、ソフト開発の作業全体の自動化や、性能がひとりでに高まる AIの自己改良が迫るとの見方が強まってきた。
「今年の年末にはコーディングさえ不要になり、AIが直接バイナリ(2進数に変換したソースコード)を書くだろう」。米起業家のイーロン・マスク氏が11日公開の動画で先を見通し、AIの進化でプログラミング言語の役割は薄れると主張した。
極論に聞こえるが、プログラミングのソースコードの記述を AIに委ねる動きは急拡大している。アンソロピックが25年11月下旬に公開した「クロードオーパス4.5」や、オープン AIが対抗して投入した「コーデックス」の性能が高く、一流のプログラマーをしのぐようになったためだ。両社はさらに2月、それぞれの改良版も発表した。

オープン AI共同創業者で著名エンジニアのアンドレイ・カルパシー氏は、25年12月を境として、自律的に動く「AIエージェント」にコード作成を任せる割合が従来の2割から8割に急上昇したという。
同氏は1年前、AIに話し言葉で指示するプログラミング手法を指す「バイブコーディング」の造語をつくった人物だ。当時は「趣味のソフト開発向けで、業務には使えない」とのニュアンスを含んでいたが、テック業界では今、この認識が一変した。
スウェーデン音楽配信大手スポティファイ・テクノロジーのグスタフ・ソーデルストロム共同最高経営責任者(CEO)は10日の決算説明会で「当社の最高の技術者と話すと、彼らは12月からコードを1行も書いていないという。(AIが)生成したコードを監督するだけになった」と述べた。
コード共有サイト「ギットハブ」前CEOで、米AI新興のエンタイアを創業したトーマス・ドムケ氏も日本経済新聞の取材に「AIエージェントが書くコードの質が高まり、人間と同等以上だとみなされる段階に到達した」と証言する。
実際にソフト開発の加速を示唆するデータもある。米調査会社センサータワーによると、米アップルの「iOS」向けスマートフォンアプリの新規公開数が25年12月以降、直近3年で初めて前年同月比 5割増となった。AIの影響でエンジニアの生産性が高まり、アプリ開発が容易になった可能性がある。

IT(情報技術)に限らず、幅広い産業で製品やサービスの付加価値に占めるソフトの比重が高まっている。AIを駆使したソフト開発に対応できるかは、企業の競争力に直結する。
ギットハブ前CEOのドムケ氏は、AIがプログラミングにもたらす変化を自動車の大量生産を可能にした「T型フォード」の登場に例える。開発効率が劇的に高まるため、対応しない企業は「インターネットやクラウドに懐疑的だった企業のように、技術革新で大幅な後れを取る」とみる。
AI企業自らが AIをフル活用し、ソフトやモデルの開発を速めている実態も明らかになってきた。アンソロピックは資料作成やデータ分析を自動化する「コワーク」を、自社の AI「クロードコード」を使って着手から約10日で公開した。同社のダリオ・アモデイCEOはソフトウエア技術者の業務全体を AIが代行する日は近いとみる。

オープン AIも、5日に発表したプログラミング用 AI「GPT-5.3コーデックス」について、「初めて AIが自身の開発に重要な役割を果たし、開発を大幅に加速した」と説明した。
この勢いでプログラミングの自動化が進めば、次の焦点は AIがより高性能の AIを自分でつくる自己改良となる。アンソロピックのアモデイ氏は1月、「AIが自律的に次の世代を開発するまで1〜2年かもしれない」と指摘した。
もちろん、先端 AIの開発が技術的な壁に直面し、停滞する可能性は残る。ただ、ひとたび AIが自己改良を始めれば、人間に手のつけられないスピードで開発が進むおそれがある。雇用代替やサイバーセキュリティー懸念といった社会リスクの管理を含め、AIの急速な進化に備えるべきだとの認識がテック界で強まってきた。