Nikkei Online, 2020年12月15日 7:36更新
政府は14日の新型コロナウイルス対策本部で、観光需要喚起策「Go To トラベル」を全国一斉に一時停止すると決めた。期間は12月28日から2021年1月11日まで。
新型コロナの感染が広がっているため人の往来を抑える。感染者数が多い東京、大阪、名古屋、札幌の4都市は先行して止める。個人の自由な移動は制限しないものの、年末年始の旅行の自粛が広がりそうだ。
「トラベル」事業は旅行会社などを通じて予約した宿泊や交通費が割引き対象になる。2万円を上限に代金の半額分を国が補助する。旅行商品から35%を割り引き、残り15%は旅先で使えるクーポン券を受け取る。政府は当初21年1月末までを期限にしていたが21年6月末までに延長すると決めていた。
政府は既に札幌市や大阪市などを目的地とする旅行を一時的に「トラベル」事業から外している。28日以降は全国を目的地とする旅行を停止する。目的地か出発地かに関係なく、国内のすべての旅行が同事業の対象外になる。
全国に先駆けて4都市を対象外にする。大阪、札幌両市を目的地とする予約は一時停止を継続し、新たに東京都と名古屋市を追加する。東京都は重症化リスクの高い65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人に「トラベル」事業の利用を自粛するよう呼びかけていた。対象を限定せずに東京都が目的地の旅行では同事業が使えなくなる。
赤羽一嘉国土交通相は14日、先行する4都市について22~27日の出発で予約済みの旅行は「トラベル」事業の対象外にすると発表した。21日までの出発で予約済みの分は利用者の判断に委ね、補助を受け取ることもできる。4都市以外の27日までの旅行は新規予約も含めて「トラベル」事業の対象にする。
キャンセル料は「確実なキャンセルを促すため、無料で可能とする」と説明した。24日までは無料でキャンセルできる。旅行会社や宿泊施設への補償は「これまで以上に手厚い支援策を講じる」と語った。15日に発表する。
観光庁によると「トラベル」事業を使った宿泊者数は、7月下旬から11月15日までで延べ5260万人で、これまで国が支援した額は少なくとも3080億円だった。野村総合研究所の木内登英氏はトラベル事業が始まった7月下旬から10月までの利用実績から1カ月の消費押し上げ効果は1809億円と試算する。全国的にトラベル事業を15日間停止した場合、893億円分の効果が失われるとみる。
菅義偉首相は14日の対策本部で「トラベル」事業について「全国一斉に一時停止する」と表明した。来年1月11日以降は「感染状況などを踏まえ、改めて判断する」と話した。「年末年始にかけてこれ以上の感染拡大を食い止め、医療機関などの負担を軽減し、落ち着いた年明けを迎えることができるよう最大限の対策を講じる」と述べた。
逼迫する医療提供体制の支援も拡充する方針を示した。医療機関に派遣する医師や看護師への支援額を倍増する。「医師は1時間に1万5千円、看護師は同5500円を補助する」と明らかにした。国民には基本的な感染防止対策の徹底と、年末年始の帰省は「慎重に検討してほしい」と呼びかけた。
首相は14日夜、緊急事態宣言の再発令を検討しているか記者団に問われ「していない」と否定した。
全国の新規感染者数は傾向がみえる7日移動平均で13日時点で2520.6人と1週間で1.2倍に増えており、再び拡大傾向が強まっている。これまで感染拡大が見られなかった地域でもクラスター(感染者集団)が発生するなど全国的な広がりも見せ始めている。重症者数も同日時点で前日比5人増の588人と過去最多を更新し続けている。