首相、緊急事態延長「心よりおわび」 変異型に新検査

Nikkei Online, 2021年3月6日 0:22更新



記者会見で緊急事態宣言の再延長
について説明する菅首相(5日午後、首相官邸)

政府は5日夜の新型コロナウイルス対策本部で、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県に発令している緊急事態宣言を21日まで再延長すると決めた。午後8時までの飲食店の時短営業の要請などこれまでの対策を続ける。感染再拡大を防ぐため無症状者向けのPCR検査の拡充にも乗り出す。

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1都3県では1月7日からの宣言発令が2カ月半に及ぶことになる。

菅義偉首相は記者会見で、宣言を解除できなかったことに「大変申し訳ない思いだ。心よりおわびする」と陳謝した。2週間の延長に関し「感染拡大を抑え込むと同時に、状況をさらに慎重に見極めるために必要な期間だ」と語った。

首相の記者会見は10都府県の宣言延長を決めた2月2日以来。

政府は足元の感染悪化を避ける措置をとりつつ解除後の感染再拡大を防ぐ方策も強化する。首相は「私がなすべきことはリバウンドを阻止し、宣言を解除できるようにすることだ」と強調した。

PCR検査の活用を広げ、感染経路や濃厚接触者を特定するためだけでなく、繁華街や歓楽街で不特定の無症状者も対象としたモニタリング検査を拡充する。政府が5日に改定した基本的対処方針に盛り込んだ。

無症状の陽性者を突き止めて宣言解除地域などで感染再拡大の予兆を早期に把握するためで、1日1万件規模を目標に取り組む。2月に先行解除した栃木県などで実績があり、首相は「大都市でも規模を拡大する」と話した。3月5日から大阪府や京都府、兵庫県で始め、6日から愛知県や福岡県でも実施する。

感染経路や濃厚接触者を追ってクラスター(感染者集団)を特定する「積極的疫学調査」も再び強化するよう保健所に呼びかける。

感染拡大前の厳格な態勢に戻し、変異ウイルスが全国に広がる状況の捕捉を狙う。保健所の人手不足に対応するため、感染者の入院や自宅療養者の健康観察などについて外部委託の活用を促す。

高齢者施設でのクラスターの発生を防ぐため、3月末までに3万の施設を検査する。変異ウイルスへの監視体制も強化し、3月から全国で短時間でウイルスを検出できる手法を取り入れる。

水際対策として日本人を含む外国からの入国者を対象に、2週間の待機中は携帯電話の位置情報に加え、ビデオ電話で状況を確認する方針も新たに掲げた。

宣言を延長する1都3県は従来の対策を継続する。

 ①飲食店の営業時間を午後8時までに短縮

 ②日中を含め不要不急の外出自粛

 ③テレワークによる出勤7割削減

 ④大規模なイベントは上限5000人とし会場の収容率は50%までに制限

――などの措置だ。時短要請に応じた事業者には1日最大6万円の協力金を支払う。

政府は宣言解除の目安として、感染状況を示す6指標が最も深刻な「ステージ4」からの脱却を掲げる。特に重視するのが病床使用率と新規感染者数だ。

感染者数が膨らみ病床が逼迫すれば、新型コロナ以外の医療提供に影響しかねない。政府資料によると4日時点の病床使用率は千葉が46%、埼玉が41%だった。

ステージ4の基準である50%を下回っているものの、加藤勝信官房長官は「まだ安定的というところに至っていない」と語った。新規感染者数も減少ペースが鈍っており警戒を続ける。

政府の新型コロナ対策分科会は解除基準について「ステージ4」からの脱却に加え「ステージ2」への改善が見込めることを求めているものの、明確な解除基準とは位置づけていない。

分科会の尾身茂会長は5日の参院予算委でコロナの年内収束は見込めないとの見方を示した。ワクチン接種が進んでも「おそらく今年の冬までは感染が広がり、重症者も時々は出る」と語った。

政府が宣言を再延長し感染再拡大の回避をめざすのは今年夏に確実に東京五輪・パラリンピックを開ける環境を整えるためでもある。再延長の期限直後の25日に福島県で聖火リレーも始まる。感染が再び広がれば、開催への慎重論が強まりかねない。