Nikkei Online, 2021年4月3日 0:10
緊急事態宣言解除後の新型コロナウイルスの感染拡大が加速している。4月1日時点で新規感染者数が前週を超えたのは全国の9割となる43都道府県にのぼった。感染源になりやすい飲食店への時短要請にとどまらず、市民に会食のあり方の見直しを求める自治体も出ている。さらに状況が深刻になれば緊急事態宣言に準じる「まん延防止等重点措置」の適用対象が、大阪府など3府県から広がる可能性もある。
「いわゆる第4波に入りつつあるという言い方をして差し支えない」。政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は2日の衆院厚生労働委員会で強調した。「重大なリバウンド(再拡大)の流れに向かっているのは間違いない」との見方だ。
直近1週間の新規感染者数が前週を上回る都道府県は、緊急事態宣言下で1ケタとなった時期もあったが、宣言解除後に急な増加傾向に転じた。日本経済新聞の集計で、大阪、兵庫、京都3府県で解除した直後の3月1日時点では10だったが、同20日には30に達し、東京都など4都県が解除された10日後の同31日には一気に40を上回った。
急激な感染拡大に自治体も焦りをみせる。協力金を二重に支給して時短効果を高めようとしているのが長野県と長野市だ。新規感染者が5割を超す増加ペースとなっている同県は2日、長野市中心部の飲食店などに営業時間の短縮や休業の要請を開始。期限の9日まで午後8時までの時短営業などに取り組んだ事業者に1日4万円、合計32万円を支給する。これとは別に長野市も市内全域で20万円の協力金を支払う。
沖縄県は84万円の協力金を一括支給する。同県は独自の緊急事態宣言が解除された3月1日以降、飲食の場で20代から40代を中心に感染が拡大。玉城デニー知事は「驚異的な速度でリバウンドが起きている」とし、20市町村で4月1~21日の期間に午後9時までの営業を求めている。協力金は全期間を通じて要請に応じた事業者にまとめて支払う。
時短要請だけでは限界があると考える自治体も出ている。2日に16市町村での時短要請を決めた京都府は、5人以上で予約する客に参加者の名簿を提出してもらうよう店側に促す。飛沫感染をなるべく防ぐため、食事中の会話を控える「黙食」も呼びかけている。
同府の西脇隆俊知事は同日の記者会見で「まん延防止等重点措置の適用になる前に、一段強い措置を講じる必要がある」と説明した。
まん延防止措置が5日から適用される兵庫県は2日、委託業者の調査員が約1万6000店の飲食店などを回ることを決めた。
政府からはまん延防止措置の適用拡大を示唆する発言も出ている。西村康稔経済財政・再生相は2日の衆院内閣委員会で、首都圏や沖縄などの感染拡大に言及しつつ「状況に応じて(まん延防止等)重点措置の活用も含めた必要な対策を講じる」と語った。
菅義偉首相は「新型コロナの感染拡大防止が最優先だ」と繰り返す。経済的な影響が出ても感染の抑え込みに注力すべきだとの立場で、自治体には飲食店の時短要請などに踏み切るよう促す。足元の感染状況に対する危機感の表れだ。